残される家族のために今すぐ遺言書を作成するべき理由

「遺言書」という言葉を聞いた場合、どのようなイメージを持つでしょうか?

高齢者が自分の死期が迫っているのを感じてから作成するものだというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

では、実際には遺言書はいつ作成するのが良いのでしょうか。

この点についての私の考えは「この記事を読んだらすぐに遺言書を作成するべき」だというものです。

その理由について考えてみたいと思います。

遺言書の内容は最優先される

相続は被相続人の死亡により開始します。

法定相続人が複数いる場合には、相続財産は共同相続人の共有となり、その後は遺産分割によって財産分けが行われることになります。

この場合は、原則として法定相続分の割合に応じることになります。

しかし、被相続人が遺言書を作成していた場合には、遺言書に書かれている内容が最優先に適用されることになります。

例えば、妻と2人の子供を残して夫が死亡した場合、法定相続分は妻が2分の1、子供がそれぞれ4分の1ですが、遺言書で妻に全部相続させる旨を記載していた場合には妻がすべて相続することになります(なお、この場合には別途遺留分が問題となります)。

遺言書は作成していなければ効果がない

遺言書の作成は要式行為と呼ばれており、実際に作成していなければならないとされています。

例えば、夫が生前に「自分の財産はすべて妻に相続させる。子供たちには妻が生きている間には1円も渡さない。」と口癖のように話をしていたとしても、またそのことを子供たちに実際に告げていたとしても、遺言書を作成していなければ、法定相続分によることになります。

また、例えば被相続人が生前に「自分が死んだら500万円を贈与する」と口約束をしていたとしても、それが履行されないまま死亡した場合には実現できません。

したがって、頭の中では「自分の財産はこのように分けよう」と考えていたとしても、それを遺言書という形に残していなければ、実現しないことになるのです。

遺言書を今すぐ作成すべき理由

では、遺言書はいつ作成するべきでしょうか。

先ほど私は「この記事を読んだらすぐに遺言書を作成するべき」と言いました。

それは、「あなたがいつ死亡するかは誰にもわからないから」です。

多くの方々は、このまま平穏に生活し、いずれは病気にかかって死亡することになると思っていることでしょう。

しかし、現実には、例えば交通事故や犯罪に巻き込まれてしまうケースや、自然災害などにより死亡するケースもあります。

近年でも東日本大震災や熊本地震、九州北部豪雨などの自然災害により多くの方々がお亡くなりになられましたが、誰もそのような亡くなり方は想像もしていなかったはずです。

もしあなたが自分の財産を誰かに相続させようと考えていたり、または実際に口に出していたとしても、遺言書を作成しないままお亡くなりになった場合、あなたの想いが実現されることはありません。

後に残るのは、共同相続人による相続争いです。

あなたの想いが実現されないだけでなく、共同相続人間での骨肉の争いに発展してしまうかもしれないのです。

このような事態は、誰にとってもメリットのある話ではないということはおわかりいただけると思います。

遺言書は後で書き換えることも可能

このようにいうと、「今考えていることと将来考えることは違うかもしれないのだから、遺言書を今の時点で作成するのは無意味ではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、遺言書は何度でも作成することができます。

そして、以前に作成していた遺言書の内容を変えたい場合には、遺言書によってその内容を書き換えることができます。

大事なのは、遺言書を作成する時点でのあなたの考えや想いを残しておくことです。

家族にとっても大事な思い出になる

遺言書には法律とは関係のない点でも作成する価値があるといえることがあります。

それは、あなたのご家族にとって大事な思い出になるということです。

先ほども挙げた東日本大震災や熊本地震のような自然災害により突然命を奪われたという場合、お亡くなりになられた方の遺品が残ることでしょう。

しかし、実際には津波で流されたり、火事で焼けてしまったなどで遺品そのものがなくなってしまうというケースもありました。

このような場合に、もし遺言書を作成していたとしたら、遺言書もあなたの遺品になります。

そして、遺言書には、写真やビデオなどの思い出の品とは異なり、あなたの想いを込めることができるのです。

最後に

いかがだったでしょうか?

弁護士として相続に関する相談を受ける際に、例えば「夫は生前に私に全財産を渡して、子供たちには渡さないと言っていたのです。」と涙ながらに訴えられることがあります。

その表情や口調からは、それが全くのでたらめであるとは思いません。

しかし、遺言書がないがために実現することができないのです。

自分の死を考えて行動することは気分のいいことではないでしょう。

しかし、自分自身だけでなくご家族のことを大事に考えているのであれば、遺言書は1日でも早く作成しておくべきであると思います。

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