子供が他人に迷惑をかけた場合に親が責任をとるべきか

子供が他人に暴力を加えて怪我をさせたり、他人の物を盗んだりなど、子供が他人に迷惑をかけてしまった場合、「子供の親は責任を取らなければならない」ということはよくいわれることですし、子供を持つ親としては当然気になることであると思います。

では、親はどのような場合に責任をとるべきなのでしょうか。

ここでいう「責任」とは、あくまでも「法的責任」を指します。

例えば、「子供が作った借金なのだから、親が返済する責任がある」といって借金の取り立てを行うケースなどがありますが、これはあくまでも道義的な責任という意味にすぎず、いざ裁判などで「親だから払え」などと主張したとしても、裁判所はそれを認めることはありません(保証人などの場合は別です)。

子供が成人している場合

まず、民法第4条が「年齢20歳をもって、成人とする。」と規定していることから、子供が成人に達した場合には親が子供の言動についての法的責任を負うことはありません。

したがって、親の責任が問題となるのは、子供が20歳未満の場合ということになります。

子供に責任能力が認められない場合

次に、民法第712条は「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と規定しています。

この「自己の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった」と判断される明確な年齢は定められていないのですが、一般的な目安としては、11~12歳程度とされています。

だとすると、加害者である子供が11~12歳よりも下であるという場合、加害者であるその子供が損害賠償をする責任がないということになりますが、それでは被害者の救済が図られなくなってします。

そこで、民法第714条第1項は

「前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」

と規定しています。

この「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」というのが、未成年者の親権者である親を指しているといえます。

逆に、714条に基づく責任を親が免れたいという場合、親の方で「監督義務を怠らなかったことまたは監督義務を怠らなくてもその損害が発生したこと」を証明する必要があります。

子供に責任能力が認められる場合

では、子供が未成年ではあるものの責任能力は十分に備えているという場合、つまり13~19歳の場合はどうでしょうか。

この場合、民法第714条の適用はないことから、原則として子供自身が損害賠償責任を負うということになります。

その反面、同条による親の責任はないということになります。

もっとも、加害者が子供である場合、損害賠償責任を果たすことができるだけの経済的な能力があるとは考えられません。

また、親としても、未成年の子供に対する監督義務があることに変わりはありません。

子供が11~12歳以下なのか、13~19歳なのかによって、被害者の救済という面で差が出るというのは著しく不合理であるといえます。

このような点を踏まえて、最高裁は

「未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する」

と判示しました(昭和49年3月22日判決)。

この判例により、①親に監督義務違反が認められ、②監督義務違反が不法行為上の義務違反と評価でき、③監督義務違反と被害者の損害との間に因果関係が認められる場合には、親自身も民法709条に基づく損害賠償責任を負うことになります。

子供に責任能力があるか否かで何が異なるのか

以上より、未成年の子供が行った言動により他人に損害が生じた場合には、親は法律上の損害賠償責任を負う可能性があるということになります。

ただし、いざ訴訟の場になると、異なる点が出てきます。

それは、「立証責任」という問題です。

先ほども述べましたが、子供が11~12歳以下の場合にその親が損害賠償責任を免れようと思えば、自らの監督責任を怠らなかったこと等を証明する必要があります。

逆に被害者は、子供の行為が民法709条の不法行為に該当する事実を立証すれば足り、その親が監督義務を果たしていないことまで立証する必要はありません。

これに対し、子供が13~19歳の場合には、子供に対する損害賠償請求が認められるためには子供の言動が民法第709条に該当することを立証することが必要であり、その親に対する損害賠償請求が認められるためには親の監督義務違反についても立証する必要があります。

他人である親がその子供に対する監督義務を怠っていたということを立証することは、実は大変難しいことです。

他人の家庭の状況など知らないことの方がほとんどだからです。

もっとも、子供が大きくなればなるほど、被害者に与える損害も大きくなるといえます。

被害者側の立証が難しいからといって「親には責任がない」などと高をくくっていると、多額の損害賠償責任を負うことになりかねません。

最後に

いずれにせよ、親は子供に対して、「他人に暴力を加えてはいけない」「他人の物やお金を盗んではいけない」「他人をいじめてはいけない」などといった、当たり前のことを当たり前だと思う子供に育てることこそが、本当の意味での「親の責任」なのだと思います。

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