私の考える「依頼者との信頼関係の構築」のために必要なこと

弁護士が依頼者のために職務を全うするにあたって必要なことは、依頼者との信頼関係です。

この点を否定する弁護士はいないでしょう。

先日、何気なく他の弁護士のホームページを見ていると、「メールでの相談はお受けしていません。」との記載を見つけました。

私はメールでの相談を無料で受けている、言ってみれば「変わり者」の部類に入る弁護士ですので、メールでの相談を受けないということに関しては何も疑問はありません。

しかし、このホームページでメール相談を受け付けない理由として「信頼関係を大事にしているから」だとありました。

それを見て、私にはふとした疑問が浮かびました。

「信頼関係が大事なのは否定しないけど、面談での相談でしか信頼関係は構築できないのか?」

今回はこの点について、私がメール相談から得た体験を踏まえて考えてみたいと思います。

弁護士が依頼者を信頼することは当然の前提である

弁護士と依頼者との信頼関係という場合、「弁護士が依頼者を信頼する」という意味と、「依頼者が弁護士を信頼する」という意味があります。

双方が成り立つことで弁護士と依頼者とが相互に信頼することになり、そこに信頼関係が構築できるということになります。

では、弁護士は依頼者のことを信頼しているでしょうか?

この点について、弁護士が依頼者から話を聞く際に、「この人は嘘をついているかもしれない。」と疑ってかかることはありません。

「この人は弁護士に相談するほどの不安や悩みを抱えているのだから、正直に話をしているに違いない。」という前提で話を聞くことになります。

また、仮に依頼者の話の中につじつまが合わない点が出てきたり、以前の話とは違うことを言い出したとしても、「あなた、嘘ついてるでしょ?」とは言いません。

弁護士は(というよりも私は)、依頼者の言葉が真実であると信じたうえで事件処理にあたらなければ仕事にはならないのです。

逆に、依頼者のことを全く信用できないというのであれば、そもそも依頼を受けることがありません。

依頼を受けるということは、依頼者のことを信用していることが前提であるということになります。

依頼者が弁護士を信頼するのは難しい

したがって、弁護士と依頼者との信頼関係の構築ということを考えた場合、それは「依頼者が弁護士を信頼するか否か」という問題に集約されるといっても過言ではないということになります。

しかし、これほど難しい問題はないと思います。

この点をもう少しわかりやすく考えるために、あなたが自分の悩みごとを弁護士ではなく友人に相談する場面を想定してみていただきたいと思います。

あなたには数多くの友人がいらっしゃることでしょう。

学生時代の同級生だけでなく、会社の同僚の中にも友人といえる方がいらっしゃるでしょうし、共通の友人を介して友達関係になったという方もいらっしゃるでしょう。

では、あなたが抱えている悩みごとを、あなたの友人といえる人たち全員に相談することはできるでしょうか?

ほぼ全員の方が「いいえ」と回答すると思います。

友人といえども、あなたの悩みごとを誰でも相談するということはありません。

あなたの中で、「相談できる友人」と「相談できない友人」との区別があるはずです。

また、「相談できる友人」の中にも、あなたが抱えている悩みごとの内容によっては「相談できない友人」がいるはずです。

つまり、あなたが友人に相談するという場合であっても、相談できる友人とはほんの一握りだと思います。

では、「相談できる友人」と「相談できない友人」はどのような基準で区別するでしょうか?

「この人に相談したら、誰かにそのことを話してしまうかもしれない。」

「この人に相談してもちゃんと聞いてくれない。」

「この人から適切なアドバイスを受けられるとは思えない。」

などという場合には、たとえ友人であっても相談しないでしょう。

つまり、相談できない友人というのは、心のどこかで信頼しきれていない部分があるということを意味しています。

友人の場合でさえ、このように限られた存在でしか相談相手にはなれません。

では、弁護士に相談するということを考えた場合、どうでしょうか?

もともと相談できる友人の職業が弁護士だということであればそれほど抵抗はないかもしれません。

しかし、大抵の方々は弁護士の友人はおろか、知人といえる弁護士もいないというのが現状です。

つまり、大抵の方々にとって弁護士に相談するというのは、すれ違う赤の他人に自分の悩みごとを相談するようなものなのです。

弁護士が依頼者から信頼してもらうために必要なこと

このように、弁護士と依頼者との信頼関係は、依頼者が弁護士を信頼して初めて成立するものだと思います。

では、弁護士が依頼者から信頼してもらうためには何が必要なのでしょうか。

この点も、あなたが友人に相談する場面を想定してみてください。

あなたが抱えている悩みごとを相談する際、どのような友人であれば信頼できるでしょうか?

あなたの考えを聞いて、それがどのようなことであってもすべて否定された場合には、その友人には二度と相談しないと思うのではないでしょうか。

逆に、あなたの考えにすべて同調してくれる友人に対しても、どこかで「まじめに考えてくれてる?」と疑ってしまうのではないかと思います。

これらに対して、あなたの考えに対して同調してくれる場合もあれば、否定的な意見を述べてくれる場合もある、時には友人自身の話をしてくれるという場合、そのような対応をする友人のことを信頼するのではないでしょうか。

つまり、あなたが信頼できる友人なのかどうかを区別している基準は、その回答の正確さやあなたの考えと合致しているか否かなどではなく、あなたの悩みごとをきちんと聞いてくれているかどうかだと思います。

端的にいえば、「親身になって聞いてくれる友人」ということになるのではないでしょうか。

このように考えると、弁護士が依頼者から信頼してもらうためには、依頼者の話をきちんと聞くこと、そして「親身になって聞いてくれた」と判断してもらえることが大事だということがわかります。

「親身になって聞いてくれた」と判断してもらうためには何が必要か

このように、依頼者の話を聞くことが大事だとしても、単に聞けばよいというものではありません。

依頼者が「親身になって聞いてくれた」と感じ取ってもらう必要があります。

この点について、「弁護士が親身になってお話をうかがいます。」と宣伝しているホームページを見たことがあります。

これを見たとき、私は「なんと傲慢なことか。」と思ったことを今でも覚えています。

「親身になって聞いてくれた」というのは依頼者自身が実感することであって、話を聞いた側つまり弁護士から評価することではありません。

もっといえば、弁護士のおごりから、そのような表現をしているとしか考えられません。

では、「弁護士が親身になって聞いてくれた」と判断してもらうために、弁護士は何をするべきでしょうか。

この点についての私の回答は、「わかりません」です。

この問題の正解がわかっていれば、私は何の苦労もなく、どのような依頼者であっても、信頼関係を構築することができるでしょう。

しかし、実際には違います。

私が弁護士として依頼者から常に信頼してもらえる立場にあり続けるというのは、実に難しい問題なのです。

だからこそ、私は依頼者の話を聞くということを重要視しています。

依頼者の話がどのような内容であっても、それが1~2時間かかるという場合であっても、メール・電話・面談といった手段を問わず、依頼者の話に耳を傾ける、そうした依頼者との対話を通じて、依頼者に少しでも信頼してもらえるように努力を続けていくのが、私がやらなければならないことだと思っています。

メール相談での出来事

このような記事を書こうと思ったきっかけとなるメールでの相談を紹介します。

相談者は福岡県在住ではなく、関東方面にお住まいの方でした。

その方は、自治体主催の無料相談などで数名の弁護士に相談していました。

私も経験があるのですが、自治体や法律相談センター、法テラスなどでの法律相談は時間が制限されており、その制限時間内に話を聞き何らかのアドバイスをしなければなりません。

そのため、相談者からの話をある程度聞いたところで打ち切り、その範囲でのアドバイスをすることで、当日の法律相談を回していく必要があります。

このことは、相談者からすれば、話を十分に聞いてもらえないまま、また途中までしか話をしていない段階で、中途半端なアドバイスしか受けられず、それに対しての更なる相談もままならないで終了してしまうことになります。

この相談者も「弁護士が親身になって話を聞いてくれなかった。」としか思えなかったようでした。

そのような状況で、私のホームページを見つけていただき、メールでの相談をしてくださいました。

その内容については守秘義務がありますので伏せますが、そのメールの文面には相談者の現状に対する苦悩や将来に対する不安などが切々と書かれていました。

私は、相談者からの質問に、文面から読み取れた事案の内容を踏まえて回答しました。

その回答の内容は、相談者がそれまでに面談で相談した弁護士と同様の回答だったと思います。

ところが、その回答に対して、相談者から次のようなメールをいただきました(そのまま引用します)。

市の無料法律相談で初めて心の内を話した弁護士さんに「はっきり言って法テラスはお金にならないので」と、言われたこと今でも忘れません。なので、お金がないとちゃんと戦えないんだなって。それでもどこかに理解してくれる弁護士さんがいるかもしれない!と、毎日携帯で調べていたのですが、なかなか心を打ち明けられそうな弁護士が見つからず…そんな中、岩熊先生の一覧に出会えたのです。ダメ元でした。

しかし、24時間以内に返信下さり、ここまで丁寧に対応してくださった弁護士さんは初めてで、初めての返信の内容でなんというんでしょうか、岩熊先生ならって。

岩熊先生とはお会いしたこともお話したこともございませんが、先生の心の込った回答がメールの一文字一文字に表れていたので、またお返事をさせていただきました。岩熊先生の優しさに、こうして私の気持ちに寄り添ってもらえることに、心から感謝しております。

ありがとうございます。

このメールをいただいたことで、依頼者との信頼関係を構築するためには、まず弁護士が依頼者から信頼してもらう必要があること、そのための手段は面談だけしかないのではなく、電話であってもメールであっても可能なのだということ、そして相談者の話をきちんと受け止めたうえで対応すれば、その思いは必ず相談者に伝わり、相談者からの信頼を得ることができるということを再認識しました。

最後に

一口に「弁護士と依頼者との間には信頼関係が必要」といっても、その本質は「弁護士が依頼者から信頼してもらうこと」です

そのための努力を惜しんでいては、真の意味での信頼関係は構築できないと思います。

私のやり方や対応の仕方がすべて正しいとはいいませんが、私は私のやり方を続けるしかありません。

私が信頼に値する弁護士であるか否かを見極めるのは、相談者自身だと思っています。

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