未婚の母が子供の認知と養育費を請求するまでの一連の流れ

未婚の男女の間で妊娠が判明した場合、それを機に結婚する場合もあれば、何らかの事情により破局してしまう場合もあります。

もっとも、破局した場合に、女性が「授かった子供を産みたい」と望み、いわゆる未婚の母として生まれてきた子供を育てるというケースがあります。

その場合、相手の男性に対して、子供を育てていくための養育費を請求したいと考えた場合、どのような手続を採る必要があるでしょうか。

今回は子供の認知と養育費について解説してみたいと思います。

認知について

認知とは何か

民法772条1項は

「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」

と規定しています。

これを嫡出推定といいます。

逆にいうと、婚姻関係にない女性が懐胎した子には嫡出推定は及びません。

その結果、婚姻関係にない女性から生まれた子供(婚外子)については、当然には法律上の父親がいないということになります。

このような婚外子の法律上の父親を設定するための行為が「認知」です。

認知の種類

認知には、大きく分けて、任意認知と強制認知の2種類があります。

任意認知とは、父親が自発的に認知する場合をいいます。

任意認知の方法には、父親が認知届を提出する場合のほか(民法781条1項)、遺言によって行う場合があります(781条2項)。

これに対して、強制認知とは、父親が認知しない場合に裁判によって認知を請求することをいいます。

認知の時期

認知は胎児のときから行うことができますが、この場合には、母親の承諾を得なければなりません(民法783条1項)。

子供が生まれた後であればいつでも認知することができますが、子供が成年に達している場合には子供の承諾を得なければなりません(民法782条)。

死亡した子供であっても、その子供に直系卑属がいるときに限って認知することができます(民法783条2項)。

この場合、その直系卑属が成年者であるときはその承諾を得なければなりません。

認知してもらうまでの手続の流れ

男性が任意に認知してくれるというのであればそれほど問題にはなりませんが、中には認知を拒否される場合があります。

その場合には、次のような流れで認知を求めていくことになります。

認知についての協議

基本的には男性との協議を行うことになります。

もっとも、妊娠の事実が発覚した時点やその後に発生した事情により交際関係が破綻したという場合には、協議を行うこと自体が困難である場合が多く、またお互いの信頼関係がないために、「妊娠した子供は自分の子供ではない可能性がある。」と女性を疑って子供の父親が自分であるということ自体を認めない場合もあります。

女性からすれば、自分自身の交際関係などを考慮すると、「父親は当然その男性しかいない」ということになるでしょうが、男性が納得しなければ、協議により認知するということにはならないのが実情です。

認知調停

協議により男性が認知しないという場合には、家庭裁判所に認知調停を申し立てることになります。

調停では、妊娠・出産した子供が男性の子供であることを主張することになりますが、相手の男性が自分の子供ではないと言い張る場合には、父子関係を立証しなければなりません。

そのための方法として採用されているのが、DNA鑑定です。

DNA鑑定の費用については、父子関係を立証する側、つまり申立人(女性側)が負担することになります。

DNA鑑定の結果、父子関係が証明された場合には、家庭裁判所は相手の男性に対して任意認知をするよう促します。

通常は、父子関係が証明された以上、男性が認知届を提出することで認知手続が完了することになるため、認知調停は取り下げることになります。

仮に男性が任意に認知届を提出せず、調停での解決ができないという場合には、裁判所が審判により認知を認めることができます。

しかし、中には調停に出頭せずDNA鑑定にも協力しないというケース、DNA鑑定の結果について争うケース、認知を認める旨の審判に対して異議を申し立てるというケースなどがあり、その場合には解決できないということになります。

認知の訴え(強制認知)

任意認知や調停・審判での解決ができない場合には、認知の訴えを提起することになります。

ここでもやはりDNA鑑定が行われることになります。

DNA鑑定により父子関係が認められた場合、その鑑定結果を覆せない限り、判決により認知が認められることになります。

この場合のDNA鑑定の費用については、立証責任を負う原告(女性側)が予納することになりますが、判決により「訴訟費用は被告の負担とする。」と言い渡された場合には、被告(男性側)に請求することができます。

認知の効果

民法784条は「認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と規定しています。

つまり、認知によって、子供が生まれた時から父子関係があるものとして取り扱われることになります。

また、認知によって法律上の父親となるため、子供には男性に関する相続権を取得することになります(民法887条)。

また、男性は子供に対する扶養義務を負うことになりますので(民法877条)、養育費を請求することができるようになります。

認知してもらわなければ養育費をもらえないのか

このように、認知により法律上の父子関係が成立することにより、法律上の扶養義務が発生することから、相手の男性に対して養育費を請求することができます。

では、男性から養育費をもらうためには必ず認知してもらわなければならないのでしょうか。

この点については、男性が任意に養育費を支払うという場合には認知までは必要ないということになります。

もっとも、この場合の男性による養育費の支払いは、法律上の扶養義務によるものではなく、あくまでも道義的・心情的な動機によるものにすぎません。

その意味では、強制的に養育費の支払いを求めることができるわけではなく、男性が養育費を支払わなくなったとしても苦情などはいえませんし、直ちに養育費を請求するべく調停を申し立てるということもできません。

したがって、男性から養育費を強制的にでも支払ってもらいたいということであれば、先に認知の手続を進める必要があります。

認知後の養育費の請求について

では、男性が認知したことにより養育費の支払いを請求することができるようになった場合、それはいつからの養育費を請求することができるでしょうか。

この点について、実務では、原則として、養育費の支払いを求めた時点からしか認められていません。

しかし、子供を出産してから認知するまでの間には相当な期間が経過することが考えられます。

また、男性が自分の子供であることを認識しておきながら、養育費の支払いを少しでも免れるために、あえて自分の子供ではないと主張したり、DNA鑑定を拒んだり、強制認知になるまで時間稼ぎをしたりする可能性があります。

その間、女性が1人で子供のための費用を支出し続けておかなければならないというのは酷であるといえます。

そこで、参考になる裁判例として、大阪高等裁判所平成16年5月19日決定があります。

「原審判は、抗告人が養育費の支払を求めた平成14年6月を分担の始期としているが、未成年者の認知審判確定前に、抗告人が相手方に未成年者の養育費の支払を求める法律上の根拠はなかったのであるから、上記請求時をもって分担の始期とすることに合理的な根拠があるとは考えられない。本件のように、幼児について認知審判が確定し、その確定の直後にその養育費分担調停の申立てがされた場合には、民法784条の認知の遡及効の規定に従い、認知された幼児の出生時に遡って分担額を定めるのが相当である。

このように、出生時にさかのぼって養育費を請求しようと考えている場合には、認知された直後に養育費の支払いを求める必要があります。

私が実際に取り扱った事件では、認知調停においてDNA鑑定を行った結果、父子関係が証明されたため、男性により任意に認知届が提出されたため認知調停を取り下げ、認知届提出から2週間後に養育費請求調停を申し立てたケースで、福岡家庭裁判所は出生時にさかのぼって養育費の支払いを認める旨の審判を言い渡したことがあります。

最後に

以上が認知から養育費の請求をするまでの流れになります。

本来であれば「妊娠した」という事実が判明した時点で結婚できればこのような問題にはならないでしょうが、さまざまな理由によって結婚できないという場合もあるでしょう。

しかし、生まれてくる子供は何も悪くありません。

むしろ、父子関係がはっきりした場合には、父親としての責任をきちんと果たすべきだと思います。

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