遺留分の減殺はどのような順序で行われるか

民法は、遺留分権利者による遺留分減殺請求によって減殺される順序について、4つのルールを定めています。

  1. 減殺されるべき遺贈および贈与が複数存在するときは、まず遺贈から減殺します(民法1033条)。
  2. 遺贈が複数あるときは、遺言者の別段の意思が表明されていない場合には、遺贈の価額の割合に応じて減殺します(民法1034条)。
  3. 遺贈が減殺され、それでも遺留分が保全されないときに贈与が減殺されます。
  4. 贈与が複数のときは、相続開始時に近い贈与から始め、順次前の贈与にさかのぼります(民法1035条)。

このように説明しても難しいと思われますので、具体例を挙げて説明してみたいと思います。

第1順序(遺贈から減殺)

上の図において、被相続人(本人)が子1に対して全財産を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

被相続人は平成29年8月1日に死亡しましたが、死亡時における相続財産は2000万円の不動産のみでした。

また、被相続人は平成28年10月1日(相続開始前1年間に該当)に子1に対して現金400万円を贈与していたとします。

他方で、子2は生前贈与などは一切認められません。

この場合の子2の個別的遺留分は8分の1、遺留分算定の基礎となる財産の価額は相続財産2000万円+生前贈与400万円=2400万円であることから、子2の遺留分侵害額は300万円ということになります。

この場合に子2が遺留分減殺請求を行った場合、「減殺されるべき遺贈および贈与が複数存在するときは、まず遺贈から減殺する(民法1033条)」とされていることから、遺贈の対象である不動産から減殺されることになります。

つまり、子2は、たとえ子1が被相続人から生前贈与として受け取った現金400万円を手元に持っていたとしても、そこから遺留分侵害額300万円が減殺されるわけではありません。

第2順序(遺贈の価額の割合に応じて減殺)

上の図において、被相続人(本人)が配偶者に対して1000万円、子1に対して500万円を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

また、被相続人は死亡前1年以内に子1に対して事業資金として900万円を贈与していたとします。

他方で、子2は生前贈与などは一切認められません。

この場合の子2の個別的遺留分は8分の1、遺留分算定の基礎となる財産の価額は配偶者への遺贈1000万円+子1への遺贈500万円+子1への生前贈与900万円=2400万円であることから、子2の遺留分侵害額は300万円ということになります。

そして、第1順序(遺贈から減殺)により、配偶者と子1に対する遺贈から減殺することになりますが、その割合が1000万円対500万円=2対1であることから、配偶者から200万円・子1から100万円が減殺されることになります。

第3順序(贈与からの減殺)

上の図において、被相続人(本人)が子1に対して全財産を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

被相続人は平成29年8月1日に死亡しましたが、死亡時における相続財産は200万円の預金のみでした。

また、被相続人は平成28年10月1日(相続開始前1年間に該当)に子1に対して2200万円の不動産を贈与していたとします。

他方で、子2は生前贈与などは一切認められません。

この場合の子2の個別的遺留分は8分の1、遺留分算定の基礎となる財産の価額は相続財産200万円+子1への生前贈与2200万円=2400万円であることから、子2の遺留分侵害額は300万円ということになります。

この状況で子2が子1に対して遺留分減殺請求をした場合、第1順序の原則により、遺贈から減殺されます。

もっとも、遺贈された預金は200万円ですので、子2の遺留分侵害額300万円からは100万円が不足することになります。

このような場合に、子1が贈与を受けた不動産に対して減殺の効力が及ぶことになります。

第4順序(贈与が複数の場合)

上の図において、被相続人(本人)が子1に対して全財産を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

被相続人は平成29年8月1日に死亡しましたが、死亡時における相続財産は200万円の預金のみでした。

また、被相続人は平成29年3月1日(相続開始前1年間に該当)に子1に対して200万円の贈与を受け、また平成28年12月1日には2000万円の不動産を贈与していたとします。

他方で、子2は生前贈与などは一切認められません。

この場合の子2の個別的遺留分は8分の1、遺留分算定の基礎となる財産の価額は相続財産200万円+子1への生前贈与(現金)200万円+子1への生前贈与(不動産)2000万円=2400万円であることから、子2の遺留分侵害額は300万円ということになります。

この状況で子2が子1に対して遺留分減殺請求をした場合、第1順序の原則により、遺贈から減殺されます。

もっとも、遺贈された預金は200万円ですので、子2の遺留分侵害額300万円からは100万円が不足することになります。

したがって、第3順序により、子1への生前贈与から減殺されることになりますが、その場合には相続開始時に近い贈与である200万円の贈与から100万円が減殺されることになり、その前の贈与である不動産からは減殺されません。

減殺対象の選択

遺留分権利者は、減殺すべき物件を選択したうえでの減殺請求はできません。

遺留分減殺請求者に目的物件の選択を認めてしまうと、受遺者側の事情が無視され、受遺者にとって必要不可欠の物件に対して減殺されることを受忍せざるを得ってしまうからです。

したがって、例えば遺留分権利者が遺留分侵害額を現金で支払うよう請求したとしても、減殺の順序に従うと不動産から減殺されるという場合には、遺留分権利者の請求どおりにはならないということになります。

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