交通事故により死亡した場合の逸失利益の算定方法

死亡事故の場合、被害者は、もし交通事故に遭わずに生存していれば得られたであろう収入や利益のすべてを失うことになります。

この死亡事故における逸失利益の損害賠償請求権は、被害者の相続人が相続することになります。

したがって、被害者の相続人は加害者に対して、死亡による逸失利益の損害賠償を請求することができるということになります。

目次

死亡事故における逸失利益の算定

逸失利益は、1年あたりの基礎収入に死亡しなければ稼働できたはずの期間(稼働可能期間)を乗じて算定することになります。

上記の計算は、単純に年収を基準として金額を算定するものですが、実際の支払いは一時金が原則であるため、上記の計算によって算定された本来は年払いとして支払われるはずの金額を一時金として評価し直す必要があります。

具体的には、中間利息の控除をする必要があります。

中間利息の控除は、稼働可能期間に応じた一定の係数を乗ずるという方法で控除することになります。

この係数には「ライプニッツ係数」と「ホフマン係数」がありますが、一般的にはライプニッツ係数が用いられています。

また、死亡事故の場合には収入を失うことになりますが、被害者が亡くなっている以上、その後の生活費の支出もなくなるということになります。

そこで、逸失利益の算定に当たっては生活費を控除する必要があります。

したがって、死亡事故における逸失利益は、以下の計算式によって算定されることになります。

死亡による逸失利益=1年当たりの基礎収入×(1-生活費控除率)×稼働可能期間に対応するライプニッツ係数

死亡による逸失利益算定のための基礎収入

自賠責保険における基礎収入

自賠責保険により死亡による逸失利益に対して保険金が支払われる場合には、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」にその基準が定められています。

これによると、次のそれぞれに掲げる年間収入額又は年相当額を基礎収入としています。

ただし、生涯を通じて全年齢平均給与額(別表Ⅲ)の年相当額を得られる蓋然性が認められない場合は、この限りでないとされています。

1 有職者

事故前1年間の収入額と死亡時の年齢に対応する年齢別平均給与額(別表Ⅳ)の年相当額のいずれか高い額を収入額とします。

ただし、次に掲げる者については、それぞれに掲げる額を収入額とします。

①35歳未満であって事故前1年間の収入額を立証することが可能な者

事故前1年間の収入額、全年齢平均給与額の年相当額及び年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額

②事故前1年間の収入額を立証することが困難な者
ア 35歳未満の者

全年齢平均給与額の年相当額又は年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額

イ 35歳以上の者

年齢別平均給与額の年相当額

③退職後1年を経過していない失業者(定年退職者等を除く。)

以上の基準を準用します。

この場合において、「事故前1年間の収入額」とあるのは、「退職前1年間の収入額」と読み替えるものとします。

2 幼児・児童・生徒・学生・家事従事者

全年齢平均給与額の年相当額とします。

ただし、58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別平均給与額の年相当額とします。

3 その他働く意思と能力を有する者

年齢別平均給与額の年相当額とします。

ただし、全年齢平均給与額の年相当額を上限とします。

4 年金等の受給者

この場合の年金等の受給者とは、各種年金及び恩給制度のうち原則として受給権者本人による拠出性のある年金等を現に受給していた者とし、無拠出性の福祉年金や遺族年金は含みません。

①有職者

事故前1年間の収入額と年金等の額を合算した額と、死亡時の年齢に対応する年齢別平均給与額(別表Ⅳ)の年相当額のいずれか高い額とします。

ただし、35歳未満の者については、これらの比較のほか、全年齢平均給与額の年相当額とも比較して、いずれか高い額とします。

②幼児・児童・生徒・学生・家事従事者

年金等の額と全年齢平均給与額の年相当額のいずれか高い額とします。

ただし、58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別平均給与額の年相当額と年金等の額のいずれか高い額とします。

③その他働く意思と能力を有する者

年金等の額と年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額とします。

ただし、年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を上回る場合は、全年齢平均給与額の年相当額と年金等の額のいずれか高い額とします。

別表Ⅲ
全年齢平均給与額(平均月額)
男子 415,400円 女子 275,100円

 

別表Ⅳ
年齢別平均給与額(平均月額)
年齢 男子 女子 年齢 男子 女子
18 187,400 169,600 44 482,000 298,800
19 199,800 175,800 45 485,600 296,500
20 219,800 193,800 46 489,300 294,300
21 239,800 211,900 47 492,900 292,000
22 259,800 230,000 48 495,500 291,800
23 272,800 238,700 49 498,100 291,700
24 285,900 247,400 50 500,700 291,600
25 298,900 256,000 51 503,300 291,400
26 312,000 264,700 52 505,800 291,300
27 325,000 273,400 53 500,700 288,500
28 337,300 278,800 54 495,500 285,600
29 349,600 284,100 55 490,300 282,800
30 361,800 289,400 56 485,200 280,000
31 374,100 294,700 57 480,000 277,200
32 386,400 300,100 58 455,400 269,000
33 398,000 301,900 59 430,900 260,900
34 409,600 303,700 60 406,300 252,700
35 421,300 305,500 61 381,700 244,500
36 432,900 307,300 62 357,200 236,400
37 444,500 309,100 63 350,100 236,400
38 450,500 307,900 64 343,000 236,400
39 456,600 306,800 65 336,000 236,500
40 462,600 305,600 66 328,900 236,500
41 468,600 304,500 67 321,800 236,500
42 474,700 303,300 68~ 314,800 236,600
43 478,300 301,000
(注) 本表は、平成12年賃金センサス第1巻第1表産業計(民・公営計)によりもとめた企業規模10~999人・学歴計の年齢階層別平均給与額(含臨時給与)をその後の賃金動向を反映して0.999倍したものである。

 

裁判基準による基礎収入

1 有職者

ア 給与所得者

原則として事故前の収入を基礎として算出します。

現実の収入が賃金センサスの平均額以下の場合には、平均賃金が得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎として算出します。

若年労働者(事故時概ね30歳未満)の場合には、学生との均衡の点もあり、全年齢平均の賃金センサスを用いるのを原則としています。

イ 事業所得者

自営業者、自由業者、農林水産業などについては、申告所得を参考にしますが、同申告額と実収入額が異なる場合には、立証があれば実収入額を基礎とするとされています。

所得が資本利得や家族の労働などの総体のうえで形成されている場合には、所得に対する本人の寄与部分の割合によって算定します。

現実収入が平均賃金以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の賃金センサスによるとされています。

現実収入の証明が困難な時は、各種統計資料による場合もあります。

ウ 会社役員

会社役員の報酬については、労務提供の対価部分を基礎収入とすることは認められますが、利益配当の実質を持つ部分は基礎収入とすることはできません。

2 家事従事者

賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎とします(最高裁昭和49年7月19日判決)。

有職の主婦の場合、実収入が上記平均賃金以上の時は実収入により、平均賃金を下回るときは平均賃金により算定します。

家事労働分の加算は認めないのが一般的です。

3 無職者

ア 学生・生徒・幼児等

賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額を基礎とします。

女子年少者の逸失利益については、女性労働者の全年齢平均賃金ではなく、男女を含む全労働者の全年齢平均賃金で算定するのが一般的です。

なお、大学生になっていない者についても、大卒の賃金センサスが基礎収入と認められる場合があります。

大卒の賃金センサスによる場合、就労の始期が遅れるため、、全体としての損害額が学歴計平均額を使用する場合と比べ減ることがあることに注意を要します。

イ 高齢者

就労の蓋然性があれば、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別、年齢別平均の賃金額を基礎とします。

また、高齢者の死亡逸失利益については、年金の逸失利益性が問題となることがあります。

4 失業者

労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性がある者は認められます。

再就職によって得られると考えられる収入を基礎とすべきで、その場合特段の事情のない限り失業前の収入を参考とします。

ただし、失業以前の収入が平均賃金以下の場合には、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の賃金センサスによります。

死亡による逸失利益算定のための稼働可能期間

稼働可能期間の始期

死亡時が稼働可能期間の始期になります。

未就労者の稼働の始期については原則として18歳とされていますが、大学卒業を前提とする場合は大学卒業時とされています。

稼働可能期間の終期

稼働可能期間の終期は、原則として67歳とされています。

67歳を超える者については、原則として簡易生命表の平均余命の2分の1とします。

67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる者については、平均余命の2分の1とします。

ただし、職種、地位、健康状態、能力等により原則と異なった判断がなされる場合があります。

年金の逸失利益を計算する場合は平均余命とします。

中間利息の控除

現行民法の法定利率は年5%とされています。

このことは、例えば手持ちの100万円を運用した場合、1年後には105万円になるということを意味しています。

つまり、同じ100万円を現時点で受領するか1年後に受領するかを考えた場合、受領する側からすれば、現時点で受領したほうが1年後には105万円になるという意味で得をすることになります。

他方で、支払う側からすれば、1年後に100万円を支払うとする場合、1年間運用することでそれが105万円になり、そこから100万円を支払ったとしても手元に5万円を残すことができます。

したがって、現時点で100万円を支払わなければならないとすると、1年間運用することができないため損をすることになります。

このような不公平を解消するために、将来受け取るべき金額を先に受け取る場合、受け取る時期までの利息分を控除することになります。

この控除される利息のことを中間利息といいます。

そして、この中間利息を控除する際の指数となるのが「ライプニッツ係数」と呼ばれるものです。

就労可能年数とライプニッツ係数との関係は、以下の表のとおりとなります。

18歳未満の場合

年齢 幼児・児童・生徒・学生・右欄以外の働く意思と能力を有する者 有識者
就労可能年数 係数 就労可能年数 係数
0 49 7.549 67 19.239
1 49 7.927 66 19.201
2 49 8.323 65 19.161
3 49 8.739 64 19.119
4 49 9.176 63 19.075
5 49 9.635 62 19.029
6 49 10.117 61 18.98
7 49 10.623 60 18.929
8 49 11.154 59 18.876
9 49 11.712 58 18.82
10 49 12.297 57 18.761
11 49 12.912 56 18.699
12 49 13.558 55 18.633
13 49 14.236 54 18.565
14 49 14.947 53 18.493
15 49 15.695 52 18.418
16 49 16.48 51 18.339
17 49 17.304 50 18.256

幼児・児童・生徒・18歳未満の学生及び働く意思と能力を有する者(有職者・家事従事者・18歳以上の学生以外)の場合の就労可能年数及びライプニッツ係数は、下記(例)に準じて算出します。
(例) 3歳の場合
(1) 就労の終期(67歳)までの年数64年(67年-3年)に対応する係数  19.119
(2) 就労の始期(18歳)までの年数15年(18年-3年)に対応する係数  10.380
(3) 就労可能年数  49年(64年-15年)
(4) 適用する係数  8.739 (19.119-10.380)

18歳以上の場合

年齢 就労可能年数 係数 年齢 就労可能年数 係数
18 49 18.169 60 12 8.863
19 48 18.077 61 11 8.306
20 47 17.981 62 11 8.306
21 46 17.88 63 10 7.722
22 45 17.774 64 10 7.722
23 44 17.663 65 10 7.722
24 43 17.546 66 9 7.108
25 42 17.423 67 9 7.108
26 41 17.294 68 8 6.463
27 40 17.159 69 8 6.463
28 39 17.017 70 8 6.463
29 38 16.868 71 7 5.786
30 37 16.711 72 7 5.786
31 36 16.547 73 7 5.786
32 35 16.374 74 6 5.076
33 34 16.193 75 6 5.076
34 33 16.003 76 6 5.076
35 32 15.803 77 5 4.329
36 31 15.593 78 5 4.329
37 30 15.372 79 5 4.329
38 29 15.141 80 5 4.329
39 28 14.898 81 4 3.546
40 27 14.643 82 4 3.546
41 26 14.375 83 4 3.546
42 25 14.094 84 4 3.546
43 24 13.799 85 3 2.723
44 23 13.489 86 3 2.723
45 22 13.163 87 3 2.723
46 21 12.821 88 3 2.723
47 20 12.462 89 3 2.723
48 19 12.085 90 3 2.723
49 18 11.69 91 2 1.859
50 17 11.274 92 2 1.859
51 16 10.838 93 2 1.859
52 15 10.38 94 2 1.859
53 14 9.899 95 2 1.859
54 14 9.899 96 2 1.859
55 14 9.899 97 2 1.859
56 13 9.394 98 2 1.859
57 13 9.394 99 2 1.859
58 12 8.863 100 2 1.859
59 12 8.863 100~ 1 0.952

18歳未満の有職者及び18歳以上の者の場合の就労可能年数については、54歳未満の者は67歳から被害者の年齢を控除した年数とし、54歳以上の者は平均余命年数の1/2とします(端数は切上げます)。

死亡による逸失利益算定のための生活費控除

自賠責保険における生活費控除

「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」では、生活費の立証が困難な場合、

被扶養者がいるとき  35%

被扶養者がいないとき 50%

を生活費として控除するものとされています。

裁判基準における生活費控除

1 一家の支柱

ア 被扶養者1人の場合

40%

イ 被扶養者2名以上の場合

30%

2 女性(主婦、独身、幼児等を含む)

30%

3 男性(独身、幼児等を含む)

50%

4 年金部分

年金部分についての生活費控除率は、通常より高くする例が多いと考えられます。

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