遺言書にはどのような種類があるか

自筆証書遺言

意義

遺言者が、遺言書の全文、日付および氏名を自分で書き、押印して作成する方式の遺言です。

誰にも知られずに簡単に遺言書を作成でき、費用もかかりません。

反面、方式不備で無効とされる危険性が高く、偽造・変造される危険性も大きいといえます。

方式

遺言書全文の自書

遺言書は、遺言書の全文を自分で書かなければなりません。

自書とは、遺言者が自筆で書くことを意味します。

自書が要件とされるのは、筆跡により本人が書いたものであることを判定でき、それ自体で遺言が遺言者の真意に出たものであることを保障できるからです。

タイプ打ちのもの、コピーしたもの、ワープロによるもの、点字によるものは、自書に当たりません。

カーボン複写の場合は、カーボン複写の方法によっても、遺言書に遺言者の筆跡は残り、筆跡鑑定によって真筆かどうかを判定することが可能であり、自筆遺言として有効であるとされた判例があります。

自書能力

遺言者は遺言当時に自書能力を有しなければなりません。

自書能力とは、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力をいいます。

筆跡が異なれば無効です。

日付

日付は、遺言能力の存否判断や、複数の遺言書の先後を確定するうえで重要であり、年月日まで客観的に特定できるように記載しなければなりません。

氏名

戸籍上の氏名でなくても、通称・雅号・ペンネームでもよいとされています。

押印

押印は、全文の自書とあいまって遺言書作成の真正さを担保します。

わが国の慣行ないし法意識としては、重要な文書については、作成者が署名したうえで押印することによって文書の作成が完結するとされています。

自筆証書遺言に使用すべき印章には制限がありません。

実印である必要はなく、認め印でもよいとされています。

押印は指印でもよいというのが判例です。

押印は、遺言の本文が書かれた書面上にされていれば足り、必ず署名の下にされていなくてもよいとされています。

遺言書本文が封筒に入れられ、その封筒の封じ目にされた押印を有効とした判例もあります。

様式

用紙が数葉にわたるときでも、全体として1通とみなせるときは、1枚に署名押印すればよいとされています。

自筆証書遺言の加除訂正(民法968条2項)

自筆証書遺言に加除・訂正を行うときには、①遺言者がその場所を指示し、②これを変更した旨を附記して③特にこれに署名し、④変更場所に印を押さなければ効力がありません。

単に遺言者が訂正箇所に斜線を引いて新たな事項を書き加えて押印するだけでは足りません。

公正証書遺言

意義

遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。

公証人は、公証人法に基づき、法務局または地方法務局に所属して、公証人役場において関係人の嘱託により公正証書の作成や書類の認証等を行う公務員です。

公正証書による遺言のメリットは次のとおりです。

  1. 内容的に適正な遺言ができます。
  2. 遺言意思が確認できるため、無効などの主張がされる可能性が少なくなります。
  3. 公証人が原本を保管するので、破棄・隠匿されるおそれがありません。また、相続人による検索が容易であるといえます。
  4. 家庭裁判所の検認の手続が不要です。

方式

公正証書による遺言は、①公証人が証人2名以上を立ち会わせて、②遺言者が、遺言の趣旨を公証人に口授し、③公証人が遺言者の口述を筆記し、④公証人が遺言者および2名以上の証人に読み聞かせ(または閲覧させ)、遺言者・証人・公証人が署名押印して作成します(民法969条)。

口授とは、遺言の内容を遺言者が公証人に直接口頭で伝えることです。

口がきけない者については、通訳人の通訳によるか、または自書することによって、口述に代えることができます(民法969条の2)。

秘密証遺言

意義

遺言者が遺言内容を秘密にしたうえで遺言書を作成し、公証人や証人の前に封印した遺言書を提出して遺言証書の存在を明らかにすることを目的として行われる遺言です。

遺言書は自書の必要がないため、自書能力がなくても遺言書を作成できますが、遺言内容が第三者に知られる危険性が少なくありません。

要件

自筆証書遺言の場合と異なり、遺言者が遺言内容を自書する必要はありません。

タイプライター、ワープロ、点字器によるものであってもよいし、他人に書いてもらったものでもよいとされています。

遺言書は、公証人・証人の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨とその筆者の氏名・住所を申述します。

遺言の筆者とは、現実に筆記した者をいいます。

ワープロ等で筆記した筆者は、ワープロを操作して遺言を入力し印字した者です。

口がきけない者の秘密証書遺言(民法972条)

要件

口がきけない者が秘密証書遺言をする場合には、遺言者は、公証人・証人の前で、自己の遺言書である旨とその筆者の氏名・住所を「通訳人の通訳により申述」するか、または「封紙に自書」して申述に代えることができます。

通訳による申述

遺言者が「通訳人の通訳により申述」する方法を選択したときには、公証人はその旨を封紙に記載しなければなりません。

封紙への自書

遺言者が「封紙に自書」する方法を選択したときには、公証人はその旨を封紙に記載して、自己の遺言書である旨の「申述の記載」に代えなければなりません。

特別方式の遺言

種類

次の4種類が定められています。

死亡危急者遺言(民法976条)

病気その他の理由で死亡の危急に迫った者の遺言

伝染病隔離者遺言(民法977条)

伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にある者の遺言

在船者遺言(民法978条)

船舶中の者の遺言

船舶遭難者遺言(民法979条)

船舶の遭難により死亡の危急に迫った者の遺言

特別方式であることの意味

特別方式の遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6カ月間生存するときに、当然に失効します(民法983条)。

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