交通事故の過失相殺とは何か

過失相殺とは、被害者に過失があった場合に、それを斟酌して、損害賠償額を調整するということです。

民法722条2項は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」として、過失相殺を定めています。

この過失相殺は、被害者の過失と加害者の過失とを割合的に把握して、それに応じて損害賠償額の調整をしていくことになります。

つまり、全損害を10とした場合に、被害者の落ち度はそのうちの3、加害者の落ち度はそのうちの7、というように把握されるということです。

過失相殺の効果

過失相殺がなされると、損害賠償金額が減額されることになります。

例えば、交通事故によって被害者に1000万円の損害が生じたとします。

この事故においては、被害者にも何らかの落ち度があったとして、その過失割合が被害者30%:加害者70%であったとします。

被害者に「30%」の割合の過失があったというのは、事故によって生じた損害のうちの30%は被害者にも責任があり、その点については被害者自身がその責任を負うべきであるため、30%については加害者に損害賠償請求することはできないということになります。

そうすると、1000万円のうちの3割である300万円は被害者自身がその責任を負担し、その分については加害者に対して損害賠償を請求できないということになります。

その結果、被害者は加害者に対して700万円の損害賠償しか請求できないということになります。

過失相殺がなされる損害

過失相殺がなされる損害については、特に制限はありません。

したがって、交通事故の場合であれば、人身事故・物損事故を問わず、あらゆる損害が過失相殺の対象となります。

被害者の「過失」

ここでいう「過失」とは、民法709条に定める「過失」とは異なります。

民法709条等の定める「過失」は法的な注意義務違反ですが、過失相殺にいう「過失」は、そこまで厳密なものではなく、一般的な落ち度とか不注意とかいった程度のもので足りると考えられています。

過失割合

過失相殺の内容によっては被害者の損害額が減額されることになるため、過失割合がどの程度になるのかということは被害者にとっても加害者にとっても重大な問題となります。

そのため、この過失相殺における過失割合をどのように決めるべきか、過失割合の認定の基準が問題となってきます。

民法には、過失相殺の規定はありますが、実際に何を考慮して過失割合を認定すればよいのかという具体的な規定はありません。

したがって、過失割合をどのように認定するのかというのは、個々の交通事故ごとに具体的事情を総合的にみて判断するほかないということになります。

しかし、個々の事件ごとに判断が異なることになると、同じような事故態様であるにもかかわらず被害者間に不公平が生ずるおそれもあります。したがって、ある程度の基準が必要となります。

そこで、交通事故の過失相殺の実務では、これまでに蓄積されてきた多数の裁判例をもとにしたある程度の認定基準が用意されており、それを基本として過失割合が認定されています。

具体的には「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」(別冊判例タイムズ第38号)が実務上の基準とされています。

「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」とは、東京地方裁判所の交通専門部の裁判官が過去の裁判例をもとにして作成した基準であり、単なる1つの研究結果としてではなく、もはや実務上の指針にまでなっている基準です。

実際の裁判実務では、概ねこの認定基準に沿って判断がなされています。

また、任意保険会社においても、過失割合についてはこの認定基準が利用されています。

「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」は、事故類型ごとに過失割合の認定基準が解説されています。

大きくは、以下の事故類型に分類されています。

  1. 歩行者と四輪車・単車との事故
  2. 四輪車同士の事故
  3. 自転車と四輪車・単車との事故
  4. 高速道路上の事故
  5. 駐車場内の事故
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