遺留分を主張できる相続人と割合について

遺留分弁護士福岡

法定相続人

遺留分を主張することができる遺留分権利者について説明する前提として、まず、誰が法定相続人になれるのかについて説明します。 “遺留分を主張できる相続人と割合について” の続きを読む

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遺留分算定の基礎となる財産にはどのようなものがあるか

遺留分弁護士福岡

遺留分権利者が主張する遺留分を金額で計算する場合の計算式は

遺留分額=遺留分算定の基礎となる財産額×個別的遺留分の割合

となります。

ここでは、「遺留分算定の基礎となる財産額」とは何かを説明することにします。

遺留分算定の基礎となる財産額

遺留分算定の基礎となる財産額は、相続開始時に被相続人が有した積極財産の価額に、被相続人が贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除することにより算定します(民法1029条)。

つまり、基本的な算定式は

遺留分算定の基礎となる財産額=(被相続人が相続開始時に有していた財産の価額)+(贈与財産の価額)-(相続債務の全額)

となります。

この中で特に注意するべきであるのが「贈与財産の価額」です。

加算される贈与

相続開始前の1年間にされた贈与(民法第1030条前段)

「相続開始前の1年間にされた贈与」とは、贈与契約が相続開始前の1年間に締結されたことを意味します。

したがって、1年以上前に贈与契約締結されていた場合には、相続開始前の1年間に履行された場合であっても該当しません。

遺留分権利者に損害を与えることを知った贈与(民法第1030条後段)

遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与については、相続の1年前よりも過去にされたものであっても、遺留分算定の基礎財産に算入され、遺留分減殺請求の対象となります(民法1030条後段)。

「損害を加えることを知って」とは、遺留分を侵害する認識があればよく、損害を与えるという加害の意図や誰が遺留分権利者であるかを知っている必要はありません。

不相当な対価でなされた有償処分(民法第1039条)

不相当な対価でなされた有償処分について、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合には、贈与とみなされ、対価を差し引いた残額が贈与として加算されます。

特別受益としての贈与

特別受益としての贈与は、特段の事情のない限り、相続開始1年前であるか否かを問わず、また、損害を加えることの認識の有無を問わず、すべて加算されることになります。

最高裁平成10年3月24日判決

民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当である。けだし、民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、すべて民法1044条、903条の規定により遺留分算定の基礎となる財産に含まれるところ、右贈与のうち民法1030条の定める要件を満たさないものが遺留分減殺の対象とならないとすると、遺留分を侵害された相続人が存在するにもかかわらず、減殺の対象となるべき遺贈、贈与がないために右の者が遺留分相当額を確保できないことが起こり得るが、このことは遺留分制度の趣旨を没却するものというべきであるからである。

特別受益の種類

民法903条1項は「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者」と規定しています。

例えば、婚姻時や養子縁組の際に渡した持参金や支度金については「婚姻または養子縁組のための贈与」として一般的には特別受益になるとされます。

これに対して、結納金や挙式費用については特別受益にならないと考えられます。

「生計の資本としての贈与」とは、居住用の不動産の贈与またはその取得のための金銭の贈与、営業資金の贈与、借地権の贈与など、生計の基礎として役立つような財産上の給付をいいます。

これに対して、遊興費の支払いのための金銭の贈与などはこれに当たらないと解されます。

特別受益者の範囲

民法903条は「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき」と規定していますので、共同相続人以外の者に対しての生前贈与は特別受益に該当しないのが原則です。

被代襲者に対しての生前贈与は、代襲相続人の特別受益となります。

これに対して、代襲原因が発生する前の代襲者の特別受益は、持戻しの対象とならないと解されています。

他方、代襲原因が発生した後の代襲者の受益は、持戻しの対象となります。

被相続人が相続人の配偶者・子らに対して贈与をしたとしても、これは相続人に対する贈与ではないため、持戻しの対象とはなりません。

ただし、真実は相続人に対する贈与であるのに、名義のみ配偶者・子としたというような場合には、特別受益に該当すると解されます。

具体例

上の図を参考にして説明します。

被相続人(本人)は、死亡した時点で、不動産や預貯金などの積極財産として5000万円、借金1000万円が存在したとします。

また、被相続人は、子(故人)の生前に、事業資金に充てさせるために500万円を贈与していたとします。

また、孫の一方に対しても、子(故人)の生前に生活費に充てさせるために100万円を贈与していたほか、子(故人)の死亡後に事業を引き継いだことから事業資金に充てさせるために300万円を贈与していたとします。

この場合の遺留分算定の基礎となる財産は、

被相続人の積極財産5000万円+子(故人)への贈与500万円+子(故人)死亡後の孫に対する贈与300万円-借金1000万円=4800万円となります。

子(故人)の生前における孫への贈与100万円については特別受益には該当しません。

このような場合に、子が遺留分を主張する場合の遺留分の金額は

遺留分算定の基礎となる財産4800万円×子の法定相続分4分の1×総体的遺留分2分の1=600万円

となります。

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遺留分減殺請求の方法とその効果

遺留分弁護士福岡

被相続人が自由分を超えて贈与や遺贈を行ったため遺留分が侵害されたときに、受遺者や受贈者などに対して、その処分行為の効力を奪うことを遺留分の減殺といい、遺留分減殺を内容とする相続人の権利を遺留分減殺請求権といいます。

遺留分減殺請求の当事者

遺留分減殺請求ができるのは、遺留分権利者とその承継人です。

遺留分権利者は兄弟姉妹およびその代襲者を除く相続人です。

その承継人とは遺留分権利者の相続人、包括受遺者、相続分の譲受人などの包括承継者はもちろん、特定承継人(例えば各処分行為に対する個別的な減殺請求権の譲受人)も含まれます。

遺留分減殺請求の相手方は、減殺の対象となる遺贈の受遺者や贈与の受贈者およびその包括承継人です。

例外的に、受贈者から目的財産を譲り受けた者(特定承継人)が、譲り受けの時において、遺留分権利者に損害を与えることを知っていたときは、相手方となります(民法1040条但書)。

遺留分減殺請求権の行使

意思表示の方法によればよく、必ずしも訴えの方法によることを要しません。

裁判外でもよく、裁判で抗弁として主張した場合でもよいとされています。

遺留分減殺請求権の効力

基本的効力

遺留分減殺請求権が行使されると、遺留分を侵害する贈与や遺贈は、侵害の限度で失効し、贈与や遺贈が未履行のときは履行義務を免れ、既に履行しているときは、返還を請求できます。

これによって贈与や遺贈の目的物は受贈者・受遺者と減殺請求者との共有関係になります。

遺留分減殺請求権の法的性質

遺留分減殺請求権が行使されると、遺留分減殺請求権に服する範囲で遺留分侵害行為(贈与・遺贈)の効力は消滅し、目的物上の権利は当然に遺留分権利者に復帰します。

最高裁昭和41年7月14日判決

「遺留分権利者が民法1031条に基づいて行う減殺請求権は形成権であつて、その権利の行使は受贈者または受遺者に対する意思表示によつてなせば足り、必ずしも裁判上の請求による要はなく、また一たん、その意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生ずるものと解するのを相当とする。従つて、右と同じ見解に基づいて、被上告人が相続の開始および減殺すべき本件遺贈のあつたことを知つた昭和36年2月26日から元年以内である昭和37年1月10日に減殺の意思表示をなした以上、右意思表示により確定的に減殺の効力を生じ、もはや右減殺請求権そのものについて民法1042条による消滅時効を考える余地はないとした原審の判断は首肯できる。」

遺留分減殺請求は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅するとされています(民法1042条)。

しかし、遺留分権利者が相続開始後1年以内に遺留分減殺請求書を内容証明郵便で郵送しておけば、遺留分減殺請求のための調停を申し立てたのが相続開始から1年以上が経過した後であっても、時効により消滅することはないということになります。

遺留分減殺請求ができる額

遺留分権利者が実際に遺留分減殺請求をする場合の金額は、必ずしも遺留分の金額とは限りません。

なぜなら、遺留分権利者も被相続人から遺贈や生前贈与を受けていたり、特別受益に該当するような贈与を受けていることもあるからです。

したがって、遺留分権利者が実際に遺留分減殺を請求できる金額(遺留分侵害額)は、次の計算式により算定します。

遺留分侵害額=遺留分額-(遺留分権利者が被相続人から相続で取得した財産額-遺留分権利者が相続によって負担すべき相続債務額)-(遺留分権利者の特別受益額+遺留分権利者が受けた遺贈額)

例えば、上の図の場合で、被相続人(本人)は子1に対して全財産を相続させる旨の遺言をしていたとします。

被相続人の死亡時における相続財産は3000万円でした。

また、被相続人は、子1に対して、生活費として500万円を生前贈与していたほか、子2に対しても、事業資金に充てるために500万円を生前贈与していたとします。

この場合の子2の遺留分について検討しています。

まず、子2の個別的遺留分は、法定相続分4分の1×総体的遺留分2分の1=8分の1です。

また、遺留分算定のための基礎財産は、相続財産3000万円+子1への特別受益額500万円+子2への特別受益額500万円=4000万円となります。

よって、子2の遺留分額は4000万円×8分の1=500万円となります。

子2は、被相続人から特別受益として500万円を受領していたわけですから、遺留分侵害額は、遺留分額500万円-特別受益額500万円=0円となります。

その結果、子2の遺留分減殺請求は認められないということになります。

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被相続人に債務がある場合の遺留分侵害額の算定方法

遺留分弁護士福岡

遺留分減殺請求権は遺留分権利者が被相続人から得た財産等を考慮し、現実に遺留分額に満たない時に成立します。

この減殺請求権の具体的額を遺留分侵害額といいます。

【基本的計算式】

遺留分侵害額=遺留分額‐(遺留分権利者が被相続人から相続で取得した財産額‐遺留分権利者が相続によって負担すべき相続債務額)-(遺留分権利者の特別受益額+遺留分権利者が受けた遺贈額)

相続債務がある場合の遺留分侵害額の算定方法

最高裁平成8年11月26日判決

「被相続人が相続開始の時に債務を有していた場合の遺留分の額は、民法1029条、1030条、1044条に従って、被相続人が相続開始の時に有していた財産全体の価額にその贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して遺留分算定の基礎となる財産額を確定し、それに同法1028条所定の遺留分の割合を乗じ、複数の遺留分権利者がいる場合は更に遺留分権利者それぞれの法定相続分の割合を乗じ、遺留分権利者がいわゆる特別受益財産を得ているときはその価額を控除して算定すべきものであり、遺留分の侵害額は、このようにして算定した遺留分の額から、遺留分権利者が相続によって得た財産がある場合はその額を控除し、同人が負担すべき相続債務がある場合はその額を加算して算定するものである。」

【具体例】

夫が死亡しました。

夫の相続人は妻・長男・長女です。

夫の遺産は積極財産として6000万円ありますが、債務も3000万円あります。

また、夫は亡くなる半年前に愛人に8000万円を贈与していました。

さらに、夫は亡くなる5年前に長男に対して5000万円を贈与していました。

夫は遺言で妻に4000万円を遺贈しました。

この場合の妻・長男・長女の遺留分侵害額はいくらでしょうか。

まず、遺留分算定の基礎となる財産は

積極財産6000万円+加算されるべき贈与額8000万円+同5000万円-債務額3000万円=1億6000万円

となります。

次に、妻の遺留分侵害額は

  • 遺留分額 1億6000万円×2分の1(総体的遺留分)×2分の1(法定相続分)=4000万円
  • 相続によって得た財産額((積極財産6000万円-遺贈額4000万円)×2分の1)-負担すべき債務額(3000万円×2分の1)+遺贈額4000万円=3500万円
  • 遺留分侵害額 4000万円-3500万円=500万円

となります。

また、長男の遺留分侵害額は

  • 遺留分額 1億6000万円×2分の1(総体的遺留分)×4分の1(法定相続分)=2000万円
  • 相続によって得た財産額((積極財産6000万円-遺贈額4000万円)×4分の1)-負担すべき債務額(3000万円×4分の1)+特別受益額5000万円=4750万円
  • 遺留分侵害額 2000万円-4750万円=-2750万円(遺留分侵害額なし)

となります。

さらに、長女の遺留分侵害額は

  • 遺留分額 長男と同じく2000万円
  • 相続によって得た財産額((6000万円-4000万円)×4分の1)-負担すべき債務額(3000万円×4分の1)=-250万円
  • 遺留分侵害額 2000万円-(-250万円)=2250万円

となります。

相続人のうちの1人に対して財産全部を「相続させる」旨の遺言がされ、当該相続人が相続債務もすべて承継した場合の遺留分の侵害額の算定

最高裁平成21年3月24日判決

「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ、当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合、遺留分の侵害額の算定においては、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である。遺留分権利者が相続債権者から相続債務について法定相続分に応じた履行を求められ、これに応じた場合も、履行した相続債務の額を遺留分の額に加算することはできず、相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得るにとどまるものというべきである。」

【具体例】

父が死亡しました。

父の相続人は長男・長女の2人です。

父の遺産には積極財産として4000万円ありますが、債務も2000万円あります。

父は、すべての財産を長男に相続させる旨の遺言を残していました。

この場合の長女の遺留分の侵害額はいくらでしょうか。

まず、遺留分算定の基礎とすべき財産は

積極財産4000万円-債務額2000万円=2000万円

となります。

長女の遺留分割合は、総体的遺留分2分の1×法定相続分2分の1=4分の1です。

他方、父の債務については法定相続分の割合に従って承継することになるため、長女は2000万円×法定相続分2分の1=1000万円の債務を承継したかのように思われます。

しかし、父が「すべての財産を長男に相続させる」旨の遺言を残している場合、特段の事情がない限り、長男のみが債務の全額を承継します(最高裁判例)。

したがって、長女の遺留分侵害額は2000万円×4分の1=500万円であり、法定相続分に応じた相続債務の額1000万円を加算することは許されない(つまり、遺留分侵害額は1500万円ではない)ということになります。

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遺留分減殺請求に関する紛争の解決方法

遺留分弁護士福岡

調停事件の申立て

申立ての趣旨

遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使したうえで、受遺者または受贈者に対し相続財産に属する物件の返還を求めることになります。

ただし、民事訴訟における請求の趣旨のように、具体的な給付内容までは求めていないのが実務の取扱いです。

申立権者

遺留分権利者(民法1031条、1028条)です。

管轄

相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所となります。

民事訴訟で認められている被相続人の相続開始時の住所地に管轄はありません。

訴訟による解決

遺留分減殺に関する紛争は、訴訟事項であり、当事者間に協議が整わない場合や調停での解決ができない場合には、裁判所に訴えを提起して解決を図ります。

管轄裁判所は、相続開始時における被相続人の普通裁判籍所在地の地方裁判所または簡易裁判所です(民事訴訟法5条14号)。

遺留分減殺請求権自体が訴訟物(訴訟によって確認を求める権利や法律関係のこと)となるものではありません。

減殺請求の効果として、遺留分権利者に帰属した権利である所有権や持分権の確認の訴え、あるいは所有権等に基づいて目的物に対する給付の訴えを提起することになります。

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遺留分の減殺はどのような順序で行われるか

遺留分弁護士福岡

民法は、遺留分権利者による遺留分減殺請求によって減殺される順序について、4つのルールを定めています。

  1. 減殺されるべき遺贈および贈与が複数存在するときは、まず遺贈から減殺します(民法1033条)。
  2. 遺贈が複数あるときは、遺言者の別段の意思が表明されていない場合には、遺贈の価額の割合に応じて減殺します(民法1034条)。
  3. 遺贈が減殺され、それでも遺留分が保全されないときに贈与が減殺されます。
  4. 贈与が複数のときは、相続開始時に近い贈与から始め、順次前の贈与にさかのぼります(民法1035条)。

このように説明しても難しいと思われますので、具体例を挙げて説明してみたいと思います。

第1順序(遺贈から減殺)

上の図において、被相続人(本人)が子1に対して全財産を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

被相続人は平成29年8月1日に死亡しましたが、死亡時における相続財産は2000万円の不動産のみでした。

また、被相続人は平成28年10月1日(相続開始前1年間に該当)に子1に対して現金400万円を贈与していたとします。

他方で、子2は生前贈与などは一切認められません。

この場合の子2の個別的遺留分は8分の1、遺留分算定の基礎となる財産の価額は相続財産2000万円+生前贈与400万円=2400万円であることから、子2の遺留分侵害額は300万円ということになります。

この場合に子2が遺留分減殺請求を行った場合、「減殺されるべき遺贈および贈与が複数存在するときは、まず遺贈から減殺する(民法1033条)」とされていることから、遺贈の対象である不動産から減殺されることになります。

つまり、子2は、たとえ子1が被相続人から生前贈与として受け取った現金400万円を手元に持っていたとしても、そこから遺留分侵害額300万円が減殺されるわけではありません。

第2順序(遺贈の価額の割合に応じて減殺)

上の図において、被相続人(本人)が配偶者に対して1000万円、子1に対して500万円を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

また、被相続人は死亡前1年以内に子1に対して事業資金として900万円を贈与していたとします。

他方で、子2は生前贈与などは一切認められません。

この場合の子2の個別的遺留分は8分の1、遺留分算定の基礎となる財産の価額は配偶者への遺贈1000万円+子1への遺贈500万円+子1への生前贈与900万円=2400万円であることから、子2の遺留分侵害額は300万円ということになります。

そして、第1順序(遺贈から減殺)により、配偶者と子1に対する遺贈から減殺することになりますが、その割合が1000万円対500万円=2対1であることから、配偶者から200万円・子1から100万円が減殺されることになります。

第3順序(贈与からの減殺)

上の図において、被相続人(本人)が子1に対して全財産を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

被相続人は平成29年8月1日に死亡しましたが、死亡時における相続財産は200万円の預金のみでした。

また、被相続人は平成28年10月1日(相続開始前1年間に該当)に子1に対して2200万円の不動産を贈与していたとします。

他方で、子2は生前贈与などは一切認められません。

この場合の子2の個別的遺留分は8分の1、遺留分算定の基礎となる財産の価額は相続財産200万円+子1への生前贈与2200万円=2400万円であることから、子2の遺留分侵害額は300万円ということになります。

この状況で子2が子1に対して遺留分減殺請求をした場合、第1順序の原則により、遺贈から減殺されます。

もっとも、遺贈された預金は200万円ですので、子2の遺留分侵害額300万円からは100万円が不足することになります。

このような場合に、子1が贈与を受けた不動産に対して減殺の効力が及ぶことになります。

第4順序(贈与が複数の場合)

上の図において、被相続人(本人)が子1に対して全財産を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

被相続人は平成29年8月1日に死亡しましたが、死亡時における相続財産は200万円の預金のみでした。

また、被相続人は平成29年3月1日(相続開始前1年間に該当)に子1に対して200万円の贈与を受け、また平成28年12月1日には2000万円の不動産を贈与していたとします。

他方で、子2は生前贈与などは一切認められません。

この場合の子2の個別的遺留分は8分の1、遺留分算定の基礎となる財産の価額は相続財産200万円+子1への生前贈与(現金)200万円+子1への生前贈与(不動産)2000万円=2400万円であることから、子2の遺留分侵害額は300万円ということになります。

この状況で子2が子1に対して遺留分減殺請求をした場合、第1順序の原則により、遺贈から減殺されます。

もっとも、遺贈された預金は200万円ですので、子2の遺留分侵害額300万円からは100万円が不足することになります。

したがって、第3順序により、子1への生前贈与から減殺されることになりますが、その場合には相続開始時に近い贈与である200万円の贈与から100万円が減殺されることになり、その前の贈与である不動産からは減殺されません。

減殺対象の選択

遺留分権利者は、減殺すべき物件を選択したうえでの減殺請求はできません。

遺留分減殺請求者に目的物件の選択を認めてしまうと、受遺者側の事情が無視され、受遺者にとって必要不可欠の物件に対して減殺されることを受忍せざるを得ってしまうからです。

したがって、例えば遺留分権利者が遺留分侵害額を現金で支払うよう請求したとしても、減殺の順序に従うと不動産から減殺されるという場合には、遺留分権利者の請求どおりにはならないということになります。

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遺留分減殺請求に対する価額弁償とは何か

遺留分弁護士福岡

遺贈につき遺留分権利者が減殺請求権を行使すると、遺贈は遺留分を侵害する限度で失効し、受遺者が取得した権利はその限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属します。

この物権的に戻った権利は、遺産分割を予定しない共有持分であり、共有状態を解消するためには共有物分割手続によることになります。

しかし、例えば遺留分減殺の対象となる遺贈が遺留分義務者の事業にとって必要不可欠な財産を対象にしたものであるとすると、遺留分義務者にとっては不測の事態を招くことになります。

そこで、遺留分義務者は、遺留分権利者に対して現物を返還するのではなく、価額を弁償することが認められています。

これを価額弁償といいます(民法1041条)。

価額弁償の要件

受遺者は、単に価額の弁償をなすべき旨の意思表示をしただけでは足りず、価額の弁償を現実に履行するか、あるいは、価額弁償のための履行の提供をして、初めて現物返還義務を免れます。

これに対して、受遺者が価額弁償の意思表示をしただけの場合、遺留分権利者は、遺留分減殺に基づく現物返還請求権も行使できますし、それに代わる価額弁償請求権も行使できます。

一部の財産についてのみ価額弁償することも可能

遺留分減殺請求権は、対象となる財産ごとに観念されます。

上の図の例で、被相続人(本人)は子1に対して全財産を遺贈する旨の遺言をしていたとします。

被相続人の死亡時における相続財産が4000万円の不動産と2000万円の株式であり、遺留分権利者である子2の遺留分が8分の1(遺留分額750万円)であったとします。

この場合、子2の遺留分減殺請求により、観念的には不動産について共有持分が8分の1(金額にして500万円)となるほか、株式についても8分の1(金額にして250万円)が減殺の対象となります。

この場合、子1は、不動産については子1と子2の共有(持分8分の7と8分の1)とするのに対し、株式については価額弁償とすることができます。

価額弁償がなされるときの目的物の価額算定の基準時

弁償すべき価額の算定時は現実に弁償がなされる時です。

訴訟のときは事実審の口頭弁論終結の時です。

最高裁昭和51年8月30日判決

遺留分権利者の減殺請求により贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者又は受遺者が取得した権利は右の限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するものと解するのが相当であつて(最高裁昭和三三年(オ)第五〇二号同三五年七月一九日第三小法廷判決・民集一四巻九号一七七九頁、最高裁昭和四〇年(オ)第一〇八四号同四一年七月一四日第一小法廷判決・民集二〇巻六号一一八三頁、最高裁昭和四二年(オ)第一四六五号同四四年一月二八日第三小法廷判決・裁判集民事九四号一五頁参照)、侵害された遺留分の回復方法としては贈与又は遺贈の目的物を返還すべきものであるが、民法一〇四一条一項が、目的物の価額を弁償することによつて目的物返還義務を免れうるとして、目的物を返還するか、価額を弁償するかを義務者である受贈者又は受遺者の決するところに委ねたのは、価額の弁償を認めても遺留分権利者の生活保障上支障をきたすことにはならず、一方これを認めることによつて、被相続人の意思を尊重しつつ、すでに目的物の上に利害関係を生じた受贈者又は受遺者と遺留分権利者との利益の調和をもはかることができるとの理由に基づくものと解されるが、それ以上に、受贈者又は受遺者に経済的な利益を与えることを目的とするものと解すべき理由はないから、遺留分権利者の叙上の地位を考慮するときは、価額弁償は目的物の返還に代わるものとしてこれと等価であるべきことが当然に前提とされているものと解されるのである。このようなところからすると、価額弁償における価額算定の基準時は、現実に弁償がされる時であり、遺留分権利者において当該価額弁償を請求する訴訟にあつては現実に弁償がされる時に最も接着した時点としての事実審口頭弁論終結の時であると解するのが相当である。

価額弁償請求にかかる遅延損害金の起算日

民法1041条1項に基づく価額弁償請求にかかる遅延損害金の起算日は、遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し、かつ、受遺者に対し弁償金の支払いを請求した翌日です。

最高裁平成20年1月24日判決

受遺者が遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受け、遺贈の目的の価額について履行の提供をした場合には、当該受遺者は目的物の返還義務を免れ、他方、当該遺留分権利者は、受遺者に対し、弁償すべき価額に相当する金銭の支払を求める権利を取得すると解される(前掲最高裁昭和54年7月10日第三小法廷判決、前掲最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決参照)。また、上記受遺者が遺贈の目的の価額について履行の提供をしていない場合であっても、遺留分権利者に対して遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をしたときには、遺留分権利者は、受遺者に対し、遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるし、それに代わる価額弁償請求権を行使することもできると解される(最高裁昭和50年(オ)第920号同51年8月30日第二小法廷判決・民集30巻7号768頁、前掲最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決参照)。そして、上記遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には、当該遺留分権利者は、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い、これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解するのが相当である。したがって、受遺者は、遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした時点で、遺留分権利者に対し、適正な遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うというべきであり、同価額が最終的には裁判所によって事実審口頭弁論終結時を基準として定められることになっても(前掲最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決参照)、同義務の発生時点が事実審口頭弁論終結時となるものではない。そうすると、民法1041条1項に基づく価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日は、上記のとおり遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し、かつ、受遺者に対し弁償金の支払を請求した日の翌日ということになる。

 

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遺留分の減殺を請求した後はどのような法律関係になるのか

遺留分弁護士福岡

共同相続人の一部に遺贈ないし贈与がなされた場合で、他の相続人が遺留分減殺請求権を行使した場合、その相続人は当該処分の効力を否定することができ、その結果、減殺された財産は減殺者のもとに取り戻されることになります。

例えば、目的物の一部が遺留分減殺の対象となった時には、目的物に関して受遺者・受贈者と減殺請求者との間で共有関係が生じます。

共有関係を解消するには、取り戻された財産(持分)は、物権法上の共有の問題として地方裁判所または簡易裁判所での共有物分割請求などの民事訴訟手続によるものと解するか、それとも遺産に復帰すると考え、家庭裁判所での遺産分割手続の審判の対象となると解するべきかが問題となります。

要するに、共有持分権を相続人固有の財産とみるか、未だ遺産分割手続が終了していない相続財産(遺産共有状態)とみるのかです。

民事訴訟手続(家庭裁判所の一般調停事件を含む)が必要な場合

減殺請求をして取り戻した場合

通説・判例は、遺留分減殺請求の結果として取り戻された財産は、遺留分減殺請求権者の固有財産となり、相続財産には復帰せず、したがって、共同相続の場合であっても遺産分割の対象とならないと解しています。

この立場によれば、財産の分割手続は、次の方法をとることになります。

  • 遺留分減殺請求権を行使した者は、訴訟手続において、遺留分減殺請求権行使により自己に帰属した持分の確認や、この持分に基づく自己への所有権移転登記手続きなどを求めることができます。
  • 取り戻したのが個別財産上の持分である場合には、この物の分割手続は、物権法上の共有物分割手続によることになります。

全部包括遺贈の場合

訴訟による共有物分割手続によって共有関係を解消します。

遺産分割手続(家庭裁判所の審判および調停)が必要な場合

割合的包括遺贈、相続分の指定、相続分の指定を伴う遺産分割方法の指定、割合的「相続させる」旨の遺言については、遺留分減殺請求後に協議が整わないときは、家庭裁判所の遺産分割手続によることになります。

割合的包括遺贈の場合

減殺の結果、遺留分を侵害する限度で包括遺贈の割合が修正され、その修正された割合に従って遺産分割を行うと解されます。

減殺財産は、遺産に対する割合であり、減殺の結果生ずる減殺部分及び取戻部分もいずれも遺産に対する割合です。

したがって、減殺部分及び取戻部分はいずれも個々の遺産に対する共有持分ではないため、その分割を共有物分割訴訟に委ねることはできません。

相続分の指定の場合

遺留分を侵害する相続分の指定は遺留分減殺請求によって遺留分を侵害する限度でその効力を失い(民法902条1項但書)、相続分が修正されたことになり、その修正された相続分にしたがって遺産分割手続を行うことになります。

割合的「相続させる」旨の遺言

相続分の指定と考えて処理します。

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