残される家族のために今すぐ遺言書を作成するべき理由

公正証書遺言

「遺言書」という言葉を聞いた場合、どのようなイメージを持つでしょうか?

高齢者が自分の死期が迫っているのを感じてから作成するものだというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

では、実際には遺言書はいつ作成するのが良いのでしょうか。

この点についての私の考えは「この記事を読んだらすぐに遺言書を作成するべき」だというものです。

その理由について考えてみたいと思います。 “残される家族のために今すぐ遺言書を作成するべき理由” の続きを読む

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会社のオーナー兼社長が遺言書を作成する際に注意すべきこと

事業承継

私が遺言書を作成するべきであると考えるケースの1つが会社のオーナー兼社長です。

日本の企業の大多数は中小企業です。

しかも、中小企業の代表取締役が会社の全株式を保有する一人株主でもあるというケースは非常に多いといえます。

そのような会社のオーナー兼社長が会社の経営を相続人に継がせたいと考えること自体は、不思議なことではありません。

しかし、そのための対策を生前にやっておかなければ、あなたの死後、会社の後継者争いが勃発することになります。 “会社のオーナー兼社長が遺言書を作成する際に注意すべきこと” の続きを読む

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認知症と診断された人が作成した遺言は無効か

相続に関するご相談を受けていると

「父(または母)が遺言書を作成していたが、父(または母)は認知症と診断されていた。だから、その遺言書は無効なのではないか?」

という質問を受けることがあります。

認知症という言葉を聞くと「物事の判断ができない状態になっている」というイメージがあり、そのような状態で遺言書を作成したとしても「内容がわかっていないのだから無効なはずだ」というように考えるのだと思います。

そのため、実際に訴訟でも

「認知症患者により作成された遺言書であるから無効である」

と主張され、争いになることがあります。 “認知症と診断された人が作成した遺言は無効か” の続きを読む

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自筆証書遺言が無効にならないための注意点

最近は、自分の人生の最期を迎えるにあたってさまざまな準備をしておくという「終活」が話題になっています。

その中でも、人生最後の意思表示といえるのが「遺言」です。

一般的には、遺言を「ゆいごん」と読みますが、法律用語としては「いごん」といいます。

法律上、遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、この中でも最も簡単に作成できるのが「自筆証書遺言」です。

しかし、この自筆証書遺言を作成するにあたってはさまざまなルールがあり、そのルールに違反してしまうと遺言書としては無効となってしまいます。

また、せっかく作った遺言書でも、その内容が実現しなければ何のために作成したのかわかりません。

そこで、今回は、自筆証書遺言が無効にならないようにするためにはどのようにするべきかについて解説したいと思います。 “自筆証書遺言が無効にならないための注意点” の続きを読む

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遺言書の概要について

遺言書

遺言とは、個人の最終意思が一定の方式のもとで表示されたものです。

法律上、遺言者の死亡後に、既に権利主体でなくなった遺言者の一方的な意思表示のみでその効果意思どおりの効力を発生させるものです。

遺言は、私的自治の原則を権利主体が死亡した後まで拡張するという意味を有し、自らの私的生活関係について、権利主体が死後の状況についてまで自己決定できることにその意義があります。

方式主義

要式行為としての遺言

遺言は、表意者が死亡してはじめて効力が生じますが、死亡時点では表意者が存在しません。

そこで、生前に行われた表意者の意思表示が真意に出たものであることを確証できるために、遺言の成立要件は厳格でなければならず、遺言による意思表示には、成立要件として一定の方式が要求されています。

遺言の解釈

遺言者の最終意思の尊重

遺言の解釈においては、遺言の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探求し、その真意に沿った内容で遺言をできるだけ有効にするように解釈します。

方式不備の遺言の扱い

遺言の方式に軽微な瑕疵がある場合、遺言をできるだけ無効としない方向での解釈も許されますが、遺言者の意思の補充には慎重を期す必要があります。

共同遺言の禁止

民法は、同一の遺言証書で2人以上の者が遺言をするのを禁止しています(民法975条)。

遺言事項の限定

民法は、遺言の明確性を確保するとともに、後日の紛争を予防するため、遺言で決めることができる事項を限定しています。

  1. 身分関係に関する事項(認知、未成年後見人の指定など)
  2. 相続の法定原則の修正(相続人の廃除、相続分の指定、分割方法の指定、特別受益の持戻し免除など)
  3. 遺産の処分に関する事項(遺贈、相続させる遺言、遺言信託など)
  4. 遺言の執行に関する事項(遺言執行者の指定など)
  5. その他(祭祀主宰者の指定、生命保険金受取人の指定・変更など)

遺言能力

意義

遺言をするには、遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識し得るに足りる意思能力(内心の意思を有効に表示する能力)があればよく、民法はその基準を満15歳としています(民法961条)。

遺言は財産行為ではなく身分行為であり、取引上の行為能力(財産上の有利不利を理解する能力)よりも低い程度の能力で足りるため、民法総則の制限行為能力に関する規定は、遺言には適用されません(民法962条)。

意思能力がない者の遺言

意思能力のない者の意思表示は無効ですので、この者がした遺言は無効です。

具体的基準として、裁判例は、通常人としての正常な判断力・理解力・表現力を備え、遺言内容について十分な理解力を有していた場合には、遺言能力としての意思能力に何ら欠けるところはないと判示しています。

成年後見における「事理弁識能力」との関係

意思無能力かどうかは、問題となる個々の法律行為ごとにその難易、重大性なども考慮して、行為の結果を正しく認識できていたかどうかということを中心に判断されるべきものです。

一般的に、本人または取引の相手方の権利を保護する等の目的で本人の行為能力を制限する成年後見制度の基準となる「事理弁識能力を欠く常況」とは異なります。

したがって、成年被後見人でも、一定の条件のもとに遺言をなし得る場合があります。

意思能力等の判定基準

能力評価では、一般に、見当識(時間や場所など今自分がおかれている現実をきちんと把握すること)、記憶力、認知能力、知能の4要素をもとに判定します。

遺言は、最終意思であることを考慮すると、遺言の内容と効果を一応なりとも理解して、その実現を欲するのに最小限必要な精神能力を有していれば十分であると思われます。

成年被後見人の遺言についての特則

成年被後見人が遺言をするためには、遺言者の真意を確保するために、被後見人が事理弁識能力を一時回復しているときにおいて遺言をするには、医師2人以上の立会いのもとに行わなければなりません(民法973条)。

また、成年被後見人や、後見に付されている未成年者が後見人の影響を受けやすいことを考慮し、かつ、後見人の不正行為を一般的に防止するため、後見の計算の終了する前に、後見人またはその配偶者もしくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は無効とされます(民法966条1項)。

遺言能力の証明責任

遺言の存在を主張する側が遺言能力の存在も証明すべきであるとされています。

遺言の無効・取消し

民法総則上の無効・取消し

民法総則の定める無効・取消事由は、意思無能力による無効と公序良俗違反による無効を除き、遺言中の身分上の事項には適用されず、財産上の事項にのみ適用されます。

方式・要件による無効

その他、遺言能力が欠如する者のした遺言、方式違反の遺言、後見人側に利益となる遺言は無効です。

遺言の効力発生時期

遺言は、遺言者の死亡の時から、その効力を生じます(民法985条1項)。

ある遺言事項(遺言全体)について停止条件が付けられていた場合には、その遺言事由(遺言全体)は、条件成就の時から、その効力を生じます(民法985条2項)。

また、遺言の効力が発生するために一定の手続が必要とされる場合があり、例えば、遺言による相続人の廃除や廃除の取り消しは、家庭裁判所の審判があるまでは効力を生じません。

審判があったときにその効力が遺言者死亡の時点までさかのぼるにとどまります(民法893条・894条2項)。

遺言の撤回

遺言撤回の自由

遺言者は、その生存中は、いつでも、何度でも遺言を撤回できます(民法1022条)。

遺言を撤回するときには、「遺言の方式に従って」行わなければなりません(民法1022条)。

撤回擬制

遺言が撤回されたものと評価される場合(撤回擬制)は、次のとおりです。

  1. 前後の遺言が内容的に抵触する場合(抵触遺言、民法1023条1項)
  2. 遺言の内容と、その生前処分とが抵触する場合(民法1023条2項)
  3. 遺言者が故意に遺言書または遺贈目的物を破棄した場合(民法1024条)

遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合

いったん行われた遺言(甲遺言)が後の遺言(乙遺言)により撤回されたときは、乙遺言が後の別の遺言(丙遺言)で撤回されたときや、乙遺言の効力が生じなくなったとき(受遺者が先に死亡した場合)でも、甲遺言は原則として復活することはありません(民法1025条本文)。

遺言者が甲遺言を復活させる意思を持っていたかどうかが遺言者死亡後に問題となったときにこれを確認することが困難であるし、遺言者が甲遺言を復活させたかったならば、甲遺言と同一内容の遺言をあらためて作成することができたはずだからです。

ただし、遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合において、遺言者の記載に照らし、遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、当初の遺言の効力が復活します。

死因贈与の撤回

民法1022条と1023条は、遺言撤回の「方式に関する部分を除いて」死因贈与に準用されます。

したがって、死因贈与をした者は、民法550条の規定に関係なく、「いつでも」死因贈与の全部または一部を撤回できます。

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遺言書にはどのような種類があるか

遺言書

自筆証書遺言

意義

遺言者が、遺言書の全文、日付および氏名を自分で書き、押印して作成する方式の遺言です。

誰にも知られずに簡単に遺言書を作成でき、費用もかかりません。

反面、方式不備で無効とされる危険性が高く、偽造・変造される危険性も大きいといえます。

方式

遺言書全文の自書

遺言書は、遺言書の全文を自分で書かなければなりません。

自書とは、遺言者が自筆で書くことを意味します。

自書が要件とされるのは、筆跡により本人が書いたものであることを判定でき、それ自体で遺言が遺言者の真意に出たものであることを保障できるからです。

タイプ打ちのもの、コピーしたもの、ワープロによるもの、点字によるものは、自書に当たりません。

カーボン複写の場合は、カーボン複写の方法によっても、遺言書に遺言者の筆跡は残り、筆跡鑑定によって真筆かどうかを判定することが可能であり、自筆遺言として有効であるとされた判例があります。

自書能力

遺言者は遺言当時に自書能力を有しなければなりません。

自書能力とは、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力をいいます。

筆跡が異なれば無効です。

日付

日付は、遺言能力の存否判断や、複数の遺言書の先後を確定するうえで重要であり、年月日まで客観的に特定できるように記載しなければなりません。

氏名

戸籍上の氏名でなくても、通称・雅号・ペンネームでもよいとされています。

押印

押印は、全文の自書とあいまって遺言書作成の真正さを担保します。

わが国の慣行ないし法意識としては、重要な文書については、作成者が署名したうえで押印することによって文書の作成が完結するとされています。

自筆証書遺言に使用すべき印章には制限がありません。

実印である必要はなく、認め印でもよいとされています。

押印は指印でもよいというのが判例です。

押印は、遺言の本文が書かれた書面上にされていれば足り、必ず署名の下にされていなくてもよいとされています。

遺言書本文が封筒に入れられ、その封筒の封じ目にされた押印を有効とした判例もあります。

様式

用紙が数葉にわたるときでも、全体として1通とみなせるときは、1枚に署名押印すればよいとされています。

自筆証書遺言の加除訂正(民法968条2項)

自筆証書遺言に加除・訂正を行うときには、①遺言者がその場所を指示し、②これを変更した旨を附記して③特にこれに署名し、④変更場所に印を押さなければ効力がありません。

単に遺言者が訂正箇所に斜線を引いて新たな事項を書き加えて押印するだけでは足りません。

公正証書遺言

意義

遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。

公証人は、公証人法に基づき、法務局または地方法務局に所属して、公証人役場において関係人の嘱託により公正証書の作成や書類の認証等を行う公務員です。

公正証書による遺言のメリットは次のとおりです。

  1. 内容的に適正な遺言ができます。
  2. 遺言意思が確認できるため、無効などの主張がされる可能性が少なくなります。
  3. 公証人が原本を保管するので、破棄・隠匿されるおそれがありません。また、相続人による検索が容易であるといえます。
  4. 家庭裁判所の検認の手続が不要です。

方式

公正証書による遺言は、①公証人が証人2名以上を立ち会わせて、②遺言者が、遺言の趣旨を公証人に口授し、③公証人が遺言者の口述を筆記し、④公証人が遺言者および2名以上の証人に読み聞かせ(または閲覧させ)、遺言者・証人・公証人が署名押印して作成します(民法969条)。

口授とは、遺言の内容を遺言者が公証人に直接口頭で伝えることです。

口がきけない者については、通訳人の通訳によるか、または自書することによって、口述に代えることができます(民法969条の2)。

秘密証遺言

意義

遺言者が遺言内容を秘密にしたうえで遺言書を作成し、公証人や証人の前に封印した遺言書を提出して遺言証書の存在を明らかにすることを目的として行われる遺言です。

遺言書は自書の必要がないため、自書能力がなくても遺言書を作成できますが、遺言内容が第三者に知られる危険性が少なくありません。

要件

自筆証書遺言の場合と異なり、遺言者が遺言内容を自書する必要はありません。

タイプライター、ワープロ、点字器によるものであってもよいし、他人に書いてもらったものでもよいとされています。

遺言書は、公証人・証人の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨とその筆者の氏名・住所を申述します。

遺言の筆者とは、現実に筆記した者をいいます。

ワープロ等で筆記した筆者は、ワープロを操作して遺言を入力し印字した者です。

口がきけない者の秘密証書遺言(民法972条)

要件

口がきけない者が秘密証書遺言をする場合には、遺言者は、公証人・証人の前で、自己の遺言書である旨とその筆者の氏名・住所を「通訳人の通訳により申述」するか、または「封紙に自書」して申述に代えることができます。

通訳による申述

遺言者が「通訳人の通訳により申述」する方法を選択したときには、公証人はその旨を封紙に記載しなければなりません。

封紙への自書

遺言者が「封紙に自書」する方法を選択したときには、公証人はその旨を封紙に記載して、自己の遺言書である旨の「申述の記載」に代えなければなりません。

特別方式の遺言

種類

次の4種類が定められています。

死亡危急者遺言(民法976条)

病気その他の理由で死亡の危急に迫った者の遺言

伝染病隔離者遺言(民法977条)

伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にある者の遺言

在船者遺言(民法978条)

船舶中の者の遺言

船舶遭難者遺言(民法979条)

船舶の遭難により死亡の危急に迫った者の遺言

特別方式であることの意味

特別方式の遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6カ月間生存するときに、当然に失効します(民法983条)。

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自筆証書遺言を見つけたら-遺言書の検認とは何か

遺言書

遺言書の検認は、遺言の方式に関する一切の事実を調査して遺言書の状態を確定し、その現状を明確にするものであり、後日の紛争に備えて、偽造・変造を防止し、遺言書の原状を保全する手続です。

検認等の手続

遺言の保管者は、相続開始を知った後に遅滞なく、相続開始地の家庭裁判所に遺言書検認の申立てをします。

遺言書の保管者がいない場合には相続人が申し立てます。

実務では、相続人等の立会いを求めており、家庭裁判所は、検認期日を指定して申立人および相続人に通知します。

また、遺言書は、特に家庭裁判所による保管が必要とされる場合を除き、検認期日まで保管者において引き続き保管してもらいます。

遺言書の開封手続についても、開封後の検認が必要となるため、遺言書検認の申立てに準じます。

検認期日では、現状を保管するために、家庭裁判所が遺言の方式に関する一切の事実を調査したうえ、当該遺言書を複写して遺言書検認調書を作成します。

検認を終えた遺言書は、申請により検認済証明をして提出者に返還します。

遺言書の開封

封印のある遺言書は、家庭裁判所での遺言書の開封が予定されています。

秘密証書遺言は封印が成立要件とされていますので、当然に開封の手続が必要です。

遺言書の検認と異なり、開封には、相続人またはその代理人の立会いが必要です(民法1004条3項)。

家庭裁判所での遺言書の開封も、遺言書の検認と同様、証拠保全手続きにすぎませんので、家庭裁判所で開封したかどうかは、遺言の効力とは関係がありません。

実務では、遺言書の開封後、直ちに遺言書の検認が必要であるため、遺言書の検認として申し立てます。

罰則

遺言書検認手続を経ずに遺言を執行したり、家庭裁判所外で封印された遺言書を開封したときは、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。

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遺言書は作成するだけではダメ-遺言執行者とは何か

遺言書

遺言の効力が発生した後は、遺言の内容を実現させることになりますが、遺言者は既に死亡しているため、遺言者に代わって遺言を執行する者が必要となります。

相続人が義務者として手続に関与することが可能であっても(遺贈など)、遺言の内容によっては相続人の利益に反するため、相続人以外の者に遺言を執行させた方がよい場合もあります。

このように遺言の内容を適正に実行させるために特に選任された者を遺言執行者といいます。

遺言執行者の立場

遺言執行者は、実質的には亡き遺言者の意思を実現させるための遺言者の代理人です。

ただ、死亡した者の代理人となることはできないので、民法は、遺言執行者の財産上の行為の効果が相続人に帰属するとの理由から、遺言執行者を相続人の代理人とみなしています(民法1015条)。

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遺言書の主流である「相続させる」旨の遺言とは何か

遺言書

「相続させる」旨の遺言が使用される理由

遺贈と比較して次のような長所があるため、公正証書遺言では、遺贈ではなく、「相続させる」とするのが普通の取扱いであり、自筆証書遺言でも「相続させる」旨の遺言の割合が増えています。

登記手続の簡便さ

所有権移転登記手続において、遺贈の場合には他の共同相続人と共同で申請しなければならないのに対し、「相続させる」旨の遺言の場合には、受益者(相続人)が単独で申請できます。

登録免許税率の低廉さ

不動産の登記をする場合には、不動産の価額に税率をかけた金額を登録免許税として支払わなければなりません。

かつては、遺贈の場合には1000分の25であるのに対し、「相続させる」旨の遺言の場合には1000分の6でした。

平成15年4月1日から施行された登録免除税の改正により、相続による登記の場合と相続人に対する遺贈を原因とする登記の場合につき、同一の税率(平成18年3月31日までは1000分の2、それ以降は1000分の4)を適用するようになったため、現在では意味はありません。

農地法3条所定の許可

相続人に対し農地を取得させる場合、登記実務上、遺贈とすると農地法3条所定の農業委員会のまたは知事の許可が必要であるのに対し、「相続させる」旨の遺言の場合には知事の許可が不要です(農地法3条1項12号)。

賃貸人の承諾の要否

遺産が借地権または賃借権の場合、遺贈であれば賃貸人の承諾が必要である(借地借家法19条、民法612条1項)のに対し、「相続させる」旨の遺言の場合には賃貸人の承諾は不要です。

「相続させる」旨の遺言の性質

遺産分割方法指定説、遺贈説、遺産分割効果説等が議論されてきましたが、判例は、相続としての処理と即時の権利移転(その結果、遺産分割手続を省略できる。)という遺言者の2つの意思を満足させるため、遺産分割効果説を採用しました。

遺産分割効果説とは、遺産分割方法指定説に立ちながら、遺産分割方法の指定そのものに遺産分割の効果を認め、その結果、特定の財産は遺産分割協議の対象から除外され、被相続人の死亡と同時に、直ちに特定の相続人の単独所有に帰すると解します。

「相続させる」旨の遺言にあっては、遺産の一部である当該遺産を当ねは該相続人に帰属さえる遺産の一部分割がされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめることになります。

最高裁平成3年4月19日判決

「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合、当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば、遺言者の意思は、右の各般の事情を配慮して、当該遺産を当該相続人をして、他の共同相続人と共にではなくして、単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではない。そして、右の「相続させる」趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は、前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって、民法908条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも、遺産の分割の方法として、このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって、右の「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。そしてその場合、遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても、当該遺産については、右の協議又は審判を経る余地はないものというべきである。」

特定の遺産について相続人に「相続させる」旨の遺言がある場合と遺産分割手続との関係

特定の遺産について相続人に「相続させる」旨の遺言がされているときは、直ちに当該相続人に相続により所有権が帰属することになるため、遺産分割の対象となる遺産ではなくなります。

包括して「相続させる」旨の遺言と遺産分割手続との関係

全財産相続型(全財産をAに「相続させる」旨の遺言)

全部包括遺贈を特定の遺産について「相続させる」旨の遺言の集合体と考えると、上記最高裁判決の理論をそのまま適用でき、遺言の効力発生と同時にAに権利が移転することになります。

したがって、すべての遺産について「相続させる」旨の遺言がされている場合には、遺産分割の対象となる遺産が存在しないことになるので、家庭裁判所に遺産分割申立てがあっても、実質的な手続はできないことになります。

割合的相続型(全財産の3分の2をAに「相続させる」旨の遺言)

遺言者の意思は、全財産の3分の2に相当する価額の遺産をAに相続させようとするものであって、必ずしもすべての財産について各3分の2の持分を取得させようとする趣旨ではありません。

したがって、遺産分割手続で共有関係の解消を図るのが妥当であるということになります。

登記実務

先例の取扱い

登記実務は、「相続させる」旨の遺言があったときには、遺産分割協議がなくても、相続を原因とする所有権移転登記の申請を受け付けるという取扱いをしています。

第三者に対する対抗要件としての登記

特定の相続人は、登記なくして「相続させる」旨の遺言による物権変動を第三者に対抗することができます。

最高裁平成14年6月10日判決

「特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの行為を要せずに、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される(最高裁平成元年(オ)第174号同3年4月19日第二小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。このように、『相続させる』趣旨の遺言による権利の移転は、法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質におい て異なるところはない。そして、法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については、登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる(最高裁昭和35年(オ)第1197号同38年2月22日第二小法廷判決・民集17巻1号235頁、最高裁平成元年(オ)第714号同5年7月19日第二小法廷判決・裁判集民事169号243頁参照)。したがって、本件において、被上告人は、本件遺言によって取得した不動産又は共有持分権を、登記なくして上告人らに対抗することができる。」

「相続させる」旨の遺言と代襲相続の有無

被相続人Aが「相続させる」旨の遺言をしたが、その遺言の効力発生前に遺言者の名宛人である特定相続人Bが死亡した場合、民法887条の規定によりBの子が特定遺産を代襲相続できるかが問題です。

この点について、登記実務では、代襲相続することなく、当該遺産は、遺産分割の対象となるという見解をとっていますが、名宛人Bの子に当該遺産を承継させたいという遺言者の通常の意思を尊重して代襲相続を認める見解もあります。

「相続させる」旨の遺言と遺言執行者の職務

特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、被相続人の死亡時に直ちにその特定の遺産が特定の相続人に「相続」を原因として承継されるものです。

そして、「相続」を原因とする所有権移転登記は、相続人が申請できることから、特定の遺産についての所有権移転登記は、特定の相続人が単独で申請できます。

したがって、遺言執行者の職務はありません。

最高裁平成7年1月24日判決

「特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる旨の遺言により、甲が被相続人の死亡とともに相続により当該不動産の所有権を取得した場合には、甲が単独で その旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負うものではない。」

「相続させる」旨の遺言と法定相続分との関係

「相続させる」旨の遺言で特定相続人に取得させるとした特定遺産と法定相続分の割合の関係

特定遺産が法定相続分の割合を超える場合、法定相続分の割合と同じ場合、法定相続分の割合を下回る場合の3種類が考えられます。

このうち法定相続分の割合と同じ場合には、相続分と現実に取得した遺産との間に過不足はないので、相続分の指定の有無は問題となりません。

しかし、他の2つの場合については、問題があります。

特定遺産が法定相続分の割合を超える場合

実務では、相続分の指定を伴う遺産分割方法の指定であると考えています。

これは、遺言者が通常、特定相続人に特定遺産を他の共同相続人に優先して取得させることを意図して「相続させる」旨の遺言をするものですから、少なくとも特定遺産が法定相続分の割合を超えている場合には、超過分の調整を予定していないとみるのが合理的な解釈であるからです。

したがって、超過分について代償金を支払うことなく特定遺産を取得することができるます。

特定遺産が法定相続分の割合を下回る場合

遺言者が相続分の指定を併せていたか否かについては、その旨を遺言中に明示している場合は少なく、遺言者の意思解釈も問題となります。

相続分の指定が伴うと解する立場からは、特定遺産だけを取得することになり、残余遺産について法定相続分との差額分の相続は問題となりませんが、相続分の指定を伴わないとする立場では、法定相続分にみつるまで残余遺産から取得できます。

特定遺産が法定相続分の割合を下回る場合には、特定遺産を取得させたいという意思のほかに、他の遺産を取得させることを禁止する意思まではないのが通常であり、そのように解するのが合理的です。

もし、そのような意思があるならば、「当該遺産だけを相続させる」旨の遺言をするのが一般的であると考えられます。

「相続させる」旨の遺言と特別受益・寄与分の関係

 特別受益との関係

「相続させる」旨の遺言により受遺者に帰属する遺産以外に残余の遺産がある場合

受遺者は、他の相続人とともに残余財産の分割に参加できますが、その残余財産の分割に当たって、受遺者が承継した遺産を民法903条の特別受益として取り扱うべきかが問題となります。

この点について、実務では、「相続させる」旨の遺言により受遺者に帰属する遺産を特別受益と解しています。

「相続させる」旨の遺言が遺贈と同じく相続開始と同時に物権的に権利が移転する効力を有し、遺産分割手続の対象から逸出することに着目すると、特定遺産は遺贈財産と同様に扱われ、持戻しの対象です。

この見解では、受遺者の承継した遺産を特別受益として、具体的相続分が算定されます。

 「相続させる」旨の遺言で特定相続人に取得させるとした特定遺産がその相続人の法定相続分(正しくは具体的相続分)の割合を超える場合

遺言者は、通常、特定相続人に特定遺産を他の共同相続人に優先して取得させることを意図して「相続させる」旨の遺言をするものであり、超過分の調整を予定していないとみるのが合理的です。

したがって、「相続させる」旨の遺言に「相続分の指定」を伴っているとみるのが相当であり、特定相続人は、残余財産の分割にはあずかれないので、「持戻し」なり、「持戻し免除」が問題となる余地はありません。

この場合、特定遺産が具体的相続分を超過することになっても、その超過分を取り戻されることなく、その額は、他の共同相続人の負担となります(民法903条2項)。

 寄与分との関係

「相続させる」旨の遺言がなされる目的に照らすと、特定遺産が、それを承継する相続人以外の者の寄与分に影響され、清算を必要とすることになるのは、当該遺言の意義を減殺することになります。

したがって、相続財産の一部である特定遺産につき「相続させる」旨の遺言がなされているときは、特定相続人は寄与分に影響されることなく、特定遺産を取得できることになると解するのが相当であると考えられます。

寄与分の考慮は残余遺産の範囲内でしか行うことはできず、これを超えて特定相続人に代償金を請求する方法はありません。

「相続させる」旨の遺言が全遺産についてなされているときは、寄与分を定める請求または申立てをする機会はありません。

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法定相続人以外にも財産をあげたい場合の手段。遺贈とは何か

遺言書

遺贈とは、被相続人が遺言によって無償で自己の財産を他人に与える処分行為(民法964条)をいいます。

物権・債権の移転、使用収益権・担保権の設定、債務の免除なども遺贈の対象です。

遺贈は、死因贈与と類似しますが、契約ではなく、無償の単独行為です。

しかも、遺言の中で行われることから、要式行為でもあります。

遺贈の当事者

遺贈者

遺贈をした被相続人です。

遺贈義務者

遺贈に伴う手続・行為(目的物の引き渡し)を実行すべき義務を負う者であり、この場合の遺贈義務者は相続人です。

遺贈の対象に不動産が含まれているときの遺贈の登記は、登記権利者である受遺者と登記義務者との共同申請によることになります。

遺贈による登記においては、登記義務者たる地位に立つ者が必要です。

受遺者

遺贈によって相続財産を与えられた者です。

自然人に限らず、法人でもよいとされています。

受遺者は、遺言の効力が発生した時点で生存又は存在しているのでなければなりません(民法994条1項)。

受遺者が遺言の効力が発生する以前に死亡したとき(同時死亡の場合も含む)は、遺贈は無効となります(民法994条1項)。

遺贈の種類

特定遺贈

包括遺贈

条件付遺贈

停止条件や解除条件などの条件を付した遺贈。

遺言には条件を付けることができますので、遺贈にも停止条件や解除条件をつけることができます。

期限付遺贈

始期付きの遺贈や終期を定めた遺贈。

補充遺贈

例えば、被相続人Aが甲地をBに譲るが、Bが断ったときはCに譲るという趣旨の遺言など、受遺者Bが遺贈を放棄したら、この者に遺贈する予定であった財産を別の者Cに遺贈するという内容の遺贈。

後継遺贈

例えば、被相続人Aが妻に全不動産を遺贈し、妻が死亡した場合に、なお、生存する不動産を長男Bに移転する趣旨の遺言など、受遺者Wの受ける遺贈利益を、ある条件の成就または期限の到来によってBに移転させるという内容の遺贈。

裾分け遺贈

受遺者Bは、その受ける財産上の利益の一部を割いてCに与えよという内容の遺贈。

負担付遺贈

受遺者に一定の行為を負担させることを内容とした遺贈。

負担の内容は、遺贈させる対象とは関係がなくてもよいとされています。

負担が履行されることによって利益を受ける者(受益者)は、相続人であってもよいし、第三者であってもよいとされています。

負担の額が遺贈される対象の価額を上回るときには、受遺者は、その対象の価額を上限として負担の履行義務が生じます(民法1002条1項)。

受遺者が負担を履行しない場合、相続人は、相当の期間を定めて催告をし、その期間が徒過したときに、遺贈の取消しを家庭裁判所に請求することができます。

特定遺贈と包括遺贈

特定遺贈

遺言者の有する特定の財産を具体的に特定して無償で与えるものです。

権利のみが受遺者に与えられます。

対象財産は遺産分割の対象から除かれます。

包括遺贈

意義

遺言者が財産の全部または一部を一定の割合で示して遺贈することをいいます。

種類

全部包括遺贈

積極・消極の財産を包括する相続財産の全部を受遺者に取得させようとする遺贈であり、被相続人に属した権利のみならず義務を含めて遺産の100%が受遺者に承継されます。

割合的包括遺贈

Aに全遺産の5分の2を、Bに5分の2を、Cに5分の1をそれぞれ遺贈する旨の分数的割合による包括遺贈です。

効果

  1. 遺贈された遺産全部(または遺産の一定割合)は、相続人の一身に専属するものを除き、遺贈の効力発生と同時に当然に、権利も義務も含めて包括的に受遺者に移転します。すなわち、包括遺贈がなされると、包括遺贈を受けた受遺者は、相続人たる地位の主要部分である財産相続権(被相続人が負っていた債務などの消極財産を含む)を取得するので、新たに受遺分の相続人が現れたという関係になります。
  2. 全部包括遺贈が第三者になされた場合は、本来相続人であったものは遺産を取得することができなくなりますから、結果として、本来相続人であった者が相続から排除されます。他方、割合的包括遺贈が第三者になされた場合は、受遺者は、あたかも受遺された割合の相続分を有する相続人と同様の立場で遺産分割などの相続権をめぐる紛争に当事者として関与します。
  3. 全部包括遺贈では、すべての遺産が遺産分割の対象から外されます。
  4. 包括受遺者は、相続人と同様に、遺贈を放棄したり、単純承認したり、限定承認したりすることができます。相続の放棄・承認に関する規律によって処理されます。
  5. 遺産分割・相続分の持戻しについても、包括受遺者は相続人と同様に扱われます。
  6. 包括遺贈についても遺留分減殺請求の対象となります。
  7. 包括遺贈の場合に遺贈される財産中に不動産が含まれているとき、遺贈による登記は共同申請になります。

包括受遺者と相続人との違い

  1. 法人は、相続人にはなれませんが、包括受遺者にはなれます。
  2. 包括受遺者には、代襲制度はありません(民法994条1項参照)。遺贈の効力が発生する前に受遺者が死亡した場合は、これにより遺贈は効力を失います。
  3. 包括受遺者に遺留分はありません。
  4. 割合的包括遺贈の場合、受遺分は固定されます。他の共同相続人や他の包括受遺者の放棄があったとき、放棄された分は別の相続人の相続分に加えられますが、受遺分は増加しません。

遺贈の効果

権利変動の効果が生じる時期

特定物の遺贈

遺言は、遺言者の死亡の時から効力を生じます(民法985条1項)ので、遺贈もその効力を生じ、遺贈の目的物に関する権利義務が遺言者から受遺者に承継されます。

判例は、「遺贈の対象となる権利は遺贈の効力発生と同時に当然に受遺者に移転する」と判示しています。

債権の遺贈

遺贈の効力を生ずると同時に、受遺者は債権と取り立てることができます。

不特定物の遺贈

遺贈の効力が生じた時点では、所有権は移転しません。

所有権が移転するためには、対象を特定するという遺贈義務者の行為が必要です。

農地の遺贈

都道府県知事の許可があって所有権移転の効果が生じます。

遺贈による権利変動と対抗要件

遺贈の効力が発生して目的物の所有権が受遺者に移転したとしても、受遺者が物権変動の事実を第三者に対抗するためには、遺贈による物権変動につき対抗要件が具備されていなければなりません。

ただし、遺言で特定遺贈につき遺言執行者が選任されている場合は、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできません(民法1013条)ので、民法1013条に違反して行われた相続人による処分行為は絶対的無効です。

遺贈と寄与分との関係

被相続人が遺贈した場合には、寄与分は、相続財産から遺贈の額を控除した残額を超えることはできません(民法904条の2第3項)。

寄与分制度は、被相続人の意思に反しない限りでの寄与の保障にすぎません。

遺贈の放棄

特定遺贈の放棄

特定遺贈の受遺者は、いつでも、遺贈を放棄することができます(民法986条1項)。

遺贈の放棄の時期に制限はありません。

特定遺贈の放棄は、相手方(遺贈義務者または遺言執行者)に対する意思表示により行われ、家庭裁判所での申述を必要としません。

特定遺贈の放棄は、遺言者が死亡した時点までさかのぼって効力を生じます(民法986条2項)。

したがって、特定遺贈により、受遺者に移転した所有権は、その放棄の結果、所有権の移転は最初から生じなかったことになります。

包括遺贈の放棄

包括遺贈については、受遺者は相続の放棄・承認に関する規定(熟慮期間、家庭裁判所での申述、放棄の遡及効、法定単純承認の規律)が適用されます。

効果

遺贈の対象となっていた財産に関して、遺贈が失効します。

遺贈を放棄したからといって、相続人としての地位までをも放棄することにはなりません。

遺贈の効力が発生した後、受遺者が遺贈の承認または放棄の意思表示をすることなく死亡したとき、原則として(遺言者が別段の意思を遺言中で表示していない限り)受遺者の相続人に承継されます。

遺贈の承認・放棄の撤回不可能

いったん行われた遺贈の承認や放棄の意思表示は、撤回することができません(民法989条1項)。

しかし、能力制限、詐欺・強迫を理由として承認・放棄の意思表示を取り消すことはできます(民法989条2項・919条2項準用)。

遺贈の無効・失効後の対象財産の帰趨

遺贈の放棄によって失効した場合において、受遺者が受けるべきであった財産は、遺言者が別段の意思を遺言中で表示していた場合を除き、相続人に帰属します(民法995条)。

遺贈の無効・取消

法律行為一般の無効・取消事由

遺贈は、法律行為ですので、法律行為一般の無効・取消事由が妥当します。

遺言の無効・取消事由

遺贈は、遺言により行われるものですので、方式違反の遺言に記載された遺贈は無効です。

遺贈に特有の無効事由

  • 遺言者が死亡する以前(同時死亡の場合を含む)に、受遺者が死亡した場合(民法944条1項)
  • 停止条件付遺贈で、条件成就する前に受遺者が死亡した場合(別段の意思表示がされていない場合(民法994条2項))
  • 遺贈の目的物が、遺言者の死亡時点で、相続財産に属していなかった場合(民法996条)

遺贈の無効・失効後の対象財産の帰趨

遺贈が無効となった場合において、受遺者が受けるべきであった財産は、遺言者が別段の意思を遺言中で表示していた場合を除き、相続人に帰属します(民法995条)。

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