労働時間にはどのようなものがあるのか

労働

法定労働時間

労働基準法32条は、労働時間について、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」(1項)、「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。」(2項)と規定しています。

つまり、労働基準法は、休憩時間を除いて、1日では8時間、1週間では40時間までを労働時間の限度としているということです。

使用者は、この労働時間を超えて労働者を働かせることはできないのが原則なのです。

そして、この労働基準法によって定められている1日8時間・1週40時間までという原則的な労働時間のことを「法定労働時間」といいます。

法定労働時間を超える労働時間

使用者が、この法定労働時間よりも短い時間の所定労働時間を定めることは、労働者に不利益となりません。

しかし、逆に、この法定労働時間を超える所定労働時間を定めることは許されません。

就業規則などで法定労働時間を超える労働時間を所定労働時間とすると定めていたとしても、法定労働時間を超える部分は無効となり、法定労働時間の限度にまで縮小されることになります。

法定労働時間を超える労働のことを時間外労働といいます。

この時間外労働をさせる場合には、三六協定という特別な取り決めが必要です。

三六協定なしに時間外労働をさせた場合、使用者は、6カ月以上の懲役または30万円以下の罰金の刑罰を科されます。

また、仮に三六協定があったとしても、法定労働時間を超えて労働させた場合には、時間外労働に対する割増賃金(残業代)を支払う必要があります。

所定労働時間

それぞれの会社・使用者において、法定労働時間とは異なる労働時間を就業規則などで定めている場合もあるかと思います。

この使用者が就業規則などで定めている労働時間のことを「所定労働時間」といいます。

具体的には、休憩時間を除く、始業時刻から終業時刻までの時間が、所定労働時間ということになります。

所定労働時間と法定労働時間

所定労働時間と法定労働時間とは異なる概念です。

したがって、両者が一致するとは限りません。

法定労働時間と同じ労働時間の所定労働時間が定められることもあれば、法定労働時間とは異なる労働時間の所定労働時間が定められることもあります。

もっとも、法定労働時間はあくまで許される最低限度の基準となる労働時間ですから、法定労働時間を超える労働時間を所定労働時間とすることは許されません。

つまり、所定労働時間として、1日8時間又は1週40時間を超える労働時間を定めることは許されないということです。

仮に法定労働時間を超える所定労働時間を定めていたとしても、法定労働時間を超える部分は無効となります。

例えば、就業規則等で、所定労働時間を午前9時から午後8時まで(休憩1時間除く)の1日10時間と定めていたとしても、法定労働時間を超える部分は無効となります。

その結果、所定労働時間は午前9時から午後6時までの8時間に短縮され、後の午後6時から午後8時までの2時間は時間外労働ということになります。

したがって、この時間外労働に対しては、割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。

逆に、所定労働時間として、法定労働時間を下回る労働時間を定めることは自由です。

例えば、1日7時間・1週35時間労働などとすることはまったく問題ありません。

なお所定労働時間が残業代などの割増賃金の計算の基本となります。

この所定労働時間をもとに基礎賃金を算定していくことになるのです。

実労働時間

労働者が、使用者の指揮監督の下で使用者に対して労働を提供する義務を負う時間のことを「労働時間」といいます。

労働時間は、労働基準法によって厳格に定められており、原則として(休憩時間を除いて)1日8時間または1週40時間とされています。

これを超える労働時間は「時間外労働」となり、割増賃金(残業代)が発生することになります。

また、法定休日における休日労働に対しても割増賃金(休日手当)が発生しますし、午後10時から午前5時までの深夜時間帯における深夜労働に対しても割増賃金(深夜手当)が発生します。

これらの割増賃金を含む賃金は、労働者の労働時間における労働の対価として支払われることになります。

したがって、残業代等の割増賃金を計算する場合には、この労働時間を基準として計算することになります。

もっとも、労働時間のすべてが労働の対価としての賃金の支払いの対象となるというわけではありません。

賃金支払いについては「ノーワークノーペイの原則」と呼ばれる原則があります。

要するに、現実に働いていない時間に対しての賃金は支払われないという原則です。

そのため、所定の労働時間内であっても、実際に労働を提供していない時間については、賃金支払いの対象とならないということになります。

この賃金支払いの対象となる実際に労働を提供した時間のことを「実労働時間」と呼んでいます。

具体的にいえば、使用者によって拘束されている拘束時間から休憩時間を除いた労働時間のことをいいます。

時間外労働、休日労働、深夜労働も同様です。

残業代・休日手当・深夜手当の支払いの対象となるのも、やはりこの実労働時間です。

したがって、残業代等計算の基礎となるのは、この実労働時間ということになります。

この実労働時間をどのように立証していくのかというのが、未払い残業代等請求における最も基本的かつ重大な問題です。

実際に紛争になった場合には、労働者の側で、実労働時間数を主張・立証しなければなりません。

一般的には、タイムカードや始業・終業時刻の記載のある業務日報等によって、主張立証していくことになります。

労働時間性の問題

労働者が使用者との間の労働契約に基づいて通常業務を行っている時間が労働時間に当たることは、ほとんど問題にならないでしょう。

しかし、業務を遂行するに当たって、明確には労働とまでいえないような行為をしなければならないことはあり得ます。

例えば、始業前の準備や移動時間、待機時間などです。

これらの労働者の行為を行う時間が労働時間といえるのかどうかという問題が「労働時間性」の問題です。

労働時間性はある労働者の行為時間が労働時間といえるかどうかという問題ですから、労働時間性の判断基準とは、要するに、労働時間の定義そのものであるともいえるでしょう。

いずれにしても、上記のような労働者の行為時間が労働時間であるならば、それに費やした実際の時間は実労働時間であり、残業代などの割増賃金の算定の基礎となり得ます。

そのため、未払い残業代等請求においても、ある労働者の行為時間の労働時間性が大きな問題となることがあります。

この具体的な労働時間性の判断基準について、前記判例(三菱重工業長崎造船所事件判決(最一小判平成12年3月9日))は、以下のとおり判示しています。

「労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)32条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」

この判例では、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を意味するので、労働時間性は「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否か」を判断基準とすべきであるとしています。

したがって、ある行為時間の労働時間制が問題となった場合には、その行為が「使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否か」を検討することになります。

ただし、判断基準はあくまで「指揮命令下に置かれたものと評価できる否か」です。

「指揮命令下に置かれていたか否か」ではありません。

明示的に使用者の指揮命令監督がなかったとしても、客観的にみて、使用者の指揮命令監督下に置かれていたと「評価」できるのであれば、労働時間性が認められるということです。

もっとも、実際の具体的な状況において「使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否か」は一義的に判断できるものではありません。

さまざまな要素を総合的に考慮して、個別具体的に判断していくことになります。

労働時間性が問題となる場合

労働時間性が問題となる労働者の行為としては、例えば、以下のようなものがあります。

手待時間・待機時間

ある労働者の行為の時間が労働時間に該当するのか否かについては、その労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かが判断の基準になります。

この基準からすれば、作業と作業との間の待機時間(手待時間)であっても、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できる場合であれば、労働時間に該当することになります。

そこで、手待時間について検討すると、手待時間は作業を行っていないとはいえ、使用者からの指示があればすぐに作業を始めなければならない状態にあるのですから、待機中であっても労働から解放されているわけでありません。

そうすると、手待時間は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できる時間といえます。

したがって、原則として労働時間に該当すると考えるべきでしょう。

労働基準法41条3号も、手待時間が特に多い場合を断続的労働として特別の規定を設けており、手待時間が労働時間に該当することを前提としています。

ただし、待機時間中は休憩時間と同様に全くの自由時間であり、次の業務を行うか否かも労働者の自由であるというような例外的な場合は、労働時間に該当する手待時間とは認められない可能性があります。

したがって、実際に待機時間・手待時間の労働時間性が争点となった場合には「使用者からの指示があればすぐに作業を始めなければならない状況にあること」を具体的に主張・立証していく必要があります。

なお、ここでいう「使用者からの指示」は、必ずしも明示的な指示である必要はありません。具体的な状況からして黙示の指示があると言える場合も含みます。

労働時間となる手待時間の具体例

裁判例において労働時間として認められた手待時間としては、例えば、以下のものが挙げられます。

タクシー運転手の客待ち時間

タクシー運転手が客待ちをしている手待時間も、「タクシーに乗車して客待ち待機をしている時間は、これが30分を超えるものであっても、その時間は客待ち待機をしている時間であることに変わりはなく、被告の具体的指揮命令があれば、直ちに原告らはその命令に従わなければならず、また、原告らは労働の提供ができる状態にあったのであるから、30分を越える客待ち待機をしている時間が、被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であることは明らかといわざるを得ない。」として、労働時間に当たると解されています(大分地判平成23年11月30日)。

貨物積込業務における貨物の到着待ち等の時間

昭和33年10月11日基発6286号は「貨物の積込係が貨物自動車の到着を待機しているいわゆる手待時間は、出勤を命ぜられ、一定の場所に拘束されている以上、労働時間である」として、貨物積込業務を行う際にその貨物が届くのを待つための待機時間も、労働時間に該当すると解釈しています。

同様に、昭和33年10月11日基発6286号では、「現実に貨物の積込を行う以外の時間には全く労働の提供はなく、いわゆる手待ち時間がその大半を占めているが、出勤を命ぜられ、一定の場所に拘束されている以上、労働時間と解すべきである。」として、トラック運転手が、出勤時刻からトラックの出発までの間にトラックに貨物が積み込まれるのを待機している時間も、労働時間に該当すると解釈しています。

休憩中の来客当番

休憩時間中に来客対応の当番をさせられている時間も、労働時間に当たると解釈されています(昭和23年4月7日基収1196号、平成11年3月31日基発168号等)。

ある業務から次の業務までの待機時間(手待ち時間)については、具体的業務に従事していないものの、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない状態にある場合には、労働時間として認められます。

仮眠時間

警備員などの職種の場合、深夜勤務を行うことがあります。

この場合、深夜勤務中に通常の労働を行えば、その時間は実労働時間に該当し、それに対して残業代や深夜手当などの賃金が発生することは当然です。

もっとも、深夜勤務等では、休息のために仮眠をとる時間が設けられていることがあります。

この仮眠時間が、本当に仮眠していればよい、言い換えれば、その仮眠時間中は業務対応を一切しなくてもよいのであれば、その時間は休憩時間であって、実労働時間には含まれないといってもよいでしょう。

しかし、実際問題として、仮眠時間であっても、緊急の業務対応をしなければならないような状況に置かれていることが少なくありません。

そこで、仮眠時間の労働時間性を考えるにあたっては、2つの場合を考える必要があります。

まず、仮眠時間中であっても、緊急業務対応などのために、実際に実作業を行うことはあるでしょう。

実作業に従事したのであれば、その実作業時間については賃金が発生します。

それが仮眠時間中であろうとなかろうと、労働時間であることに間違いはありませんから、労働基準法に基づいて賃金が発生します。

問題となるのは、実作業に従事していない仮眠時間を労働時間とみることができるのかどうかです。

実作業を行っていない仮眠時間(不活動仮眠時間)であっても、労働者は、いつ業務対応を迫られるのか分からず、完全に休息できているとはいえないでしょう。

不活動仮眠時間であるからといって、これをまったく休憩時間として扱うのは労働者に不利益となることがあり得ます。

したがって、不活動仮眠時間であっても、業務対応・実作業の従事が必要とされており、労働義務から完全に解放されているといえない場合には、休憩時間とはいえないと考えるべきです。

そして、業務対応等が必要である以上、その不活動仮眠時間も使用者の指揮命令下にあるものとして、労働時間として扱うのが妥当でしょう。

この点について、最高裁判所も、「不活動仮眠時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。」と判示しています(最一小判平成14年2月28日・大星ビル事件判決)。

つまり、不活動仮眠時間であっても、労働からの解放が保障されていない場合には、使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるので、その仮眠時間は労働時間に該当するということです。

それでは、どのような場合に労働からの解放が保障されていないということになるのかというと、大星ビル事件判決は「当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である」と判示しています。

したがって、不活動仮眠時間が使用者の指揮命令下にある労働時間に該当するかどうかは、「当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合」に該当するのかどうかが問題となるのです。

業務開始前の準備・業務終了後の後始末

事業開始前の準備行為や業務終了後の後始末行為であっても、例えば、それらの行為をしなければ法令上または労働契約上の不利益を受けるなどの場合には、事実上、当該行為をすることを使用者から強制されているといえるため、労働時間に該当します。

移動時間

移動時間のうちでも通勤時間については、労働時間には当たらないと解するのが一般的でしょう。

事業所から作業現場への移動時間や出張時の移動時間などについては、例えば、移動場所・方法・時間等が使用者の指示に基づくものであれば、労働時間として認められます。

朝礼・ミーティングへの参加

朝礼・ミーティング等への参加も、使用者からの命令に基づく場合や、不参加の場合に不利益を受けるなど、事実上、当該行為をすることを使用者から強制されているといえる場合には、労働時間として認められるでしょう。

研修・昇進試験等への参加

研修・昇進試験への参加も、使用者からの命令に基づく場合や、不参加の場合に不利益を受けるなど、事実上、当該行為をすることを使用者から強制されているといえる場合には、労働時間として認められるでしょう。

また、業務遂行のためには、その研修への参加・資格取得が必要となるという場合にも、使用者の指揮命令によるものといえるので、労働時間として認められます。

健康診断

一般健康診断の受診時間については、労働時間ではないと解するのが一般的と思われます。

ただし、その間の賃金は事業者が支払うのが望ましいとされています(昭和47年9月18日基発602号)。

これに対し、一定の有害業務に従事する労働者に対する特殊健康診断の受信時間は、労働時間となると解されています(昭和47年9月18日基発602号)。

持ち帰り残業

仕事を自宅に持ち帰って行う、いわゆる「持ち帰り残業」については、使用者からの明示または黙示の指揮命令があった場合には、労働時間として認められます。

仕事上の接待

接待は業務との関連性が薄いため、基本的には労働時間とはいえません。

ただし、使用者からの命令で参加したというような場合には、労働時間として認められる余地があるでしょう。

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時間外労働とは何か

労働時間には、労働基準法で定められている法定労働時間と、使用者が就業規則などで定める所定労働時間とがあります。

これらの労働時間を超える労働のことを時間外労働(残業)といいます。

法定労働時間とは、1日8時間(または1週40時間)の労働時間のこといいます。

この法定労働時間を超える時間外労働のことを「法外残業」または「法定時間外労働」といいます。

使用者は、この法定労働時間を超える所定労働時間を定めることは、労働基準法に違反することになります。

したがって、使用者が定めることができる所定労働時間とは、法定労働時間の範囲内に限られるということになります。

逆に、法定労働時間を下回る所定労働時間を定めることは問題ありません。

そうすると、法定労働時間を下回る所定労働時間を定めた場合、所定労働時間と法定労働時間との間に差が生ずることになります。

例えば、就業規則で労働時間は、午前9時から午後5時まで(休憩1時間を除く)と定められていたとします。

この場合の所定労働時間は休憩時間を除いて7時間ということになります。

このような所定労働時間が定められている場合に、午前9時から午後9時まで働いたとします。

この場合、午後5時から午後6時までの1時間については、労働基準法所定の法定労働時間である1日8時間を超える労働時間ではありません。

しかし、就業規則では午後5時までと定められている場合、午後6時までの労働は所定労働時間を超えた労働であるということになります。

このように、就業規則における所定労働時間は超えているが法定労働時間は超えていない時間外労働のことを「法内残業」といいます。

法外残業(法定時間外労働)に対しては、基礎賃金の1.25倍以上の割増賃金(残業代)を支払う必要があります。

他方、法内残業に対してはそのような割増賃金を支払う必要はなく、通常の賃金で足りることになります。

ただし、法内残業に対しても割増賃金を支払うということを就業規則などで定めることは許されます。

時間外労働に対する規制

使用者は、原則として、労働者を時間外労働させることはできません。

使用者が、労働者に時間外労働をさせるためには、労働基準法所定の要件を満たす三六協定を締結し、労働基準監督署に提出しておく必要があります。

もっとも、三六協定を労働基準監督署に提出していたとしても、労働者に法外残業をさせた場合には、使用者は時間外労働に対して割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。

時間外労働に対する割増賃金(残業代)の割増率は、原則として1.25倍以上です。

ただし、時間外労働が月に60時間を超える場合には、その60時間超過部分については、基礎賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払わなければならない場合があります。

この割増賃金の支払いは、三六協定の有無にはかかわらないということです。

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深夜労働とは何か

労働基準法では、労働者の心身の健康を維持するため、午後10時から午前5時までの間の時間帯(深夜時間帯)の労働に制限を加えています。

この午前10時から午後5時までの深夜時間帯に労働をさせることを「深夜労働」といいます。

深夜時間帯は、本来休息に充てられるべき時間帯であり、深夜時間帯に労働者を労働させることは、労働者の生活のリズムを崩し、その心身を害するおそれがあります。

そのため、深夜労働に対しては、労働基準法上も、厳重な規制が敷かれています。

深夜労働の禁止

年少者の酷使防止のために、満18歳未満の年少者については、深夜労働が禁止されます(労働基準法61条1項)。

ただし、交代制の場合には、行政官庁の許可があれば、16歳以上の男性に限り、午後10時30分まで、または午前5時30分から労働させることができます。

女性については、かつては深夜労働が一部例外を除いて一律に禁止されていましたが、現在では、男女の雇用機会の均等の見地から、上記の年少者に当たらない限り、男性と同様の深夜労働が可能となっています。

もっとも、妊娠中または産後1年以内の妊産婦については、妊産婦が請求した場合、深夜労働が禁止されています(労働基準法64条の3第1項)。

深夜労働の制限

前記年少者・妊産婦以外については、深夜労働は禁止されていません。

また、時間外労働や休日労働と異なり、深夜労働をさせる場合の三六協定も必要とされていません。

もっとも、使用者が労働者を深夜労働させた場合、割増賃金(基礎賃金の1.25倍以上)を支払わなければなりません。

一般的に「深夜手当」と呼ばれるものです。

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休日労働とは何か

労働

労働基準法第35条は、使用者は労働者に対して、最低でも1週間に1回以上の休日を与えなければならないと規定しています(週休制)。

また、就業規則等によって1週1回の原則を変更する場合でも、4週間に4回以上の休日は付与しなければなりません(変形週休制)。

このように、労働基準法によって最低でも週1回(または4週間に4回)以上労働者に与えられなければならない休日のことを「法定休日」といいます。

法定休日は、労働基準法が定める最低基準であるため、この条件を下回る休日の付与は許されません。

例えば、休日を与えないということはもちろん、2週間に1回というように回数を減らすことも許されませんし、(上記の変形週休制の場合を除き)最初の週に2回与えて次の週には1回も与えないというようなことも許されません。

前記の法定休日はあくまで最低の基準であるため、労使間の取り決めで、これを上回る回数の休日を労働者に与えることは何らの問題もありません。

実際、週休2日としている会社・事業者は多いと思います。

この労使間の取り決めなどによって定めた法定休日以外の休日のことを「法定外休日」といいます。

なお、週1回(または4週4回)の休日とは別の休日が、すべて法定外休日となるわけではありません。

週1回(または4週4回)の休日とは別の休日も法定休日として取り扱うことは、後記のとおりむしろ労働者に有利ですから、何らの問題もありません。

例えば、毎週土日が休日だったとします。

この場合、土日のうち1日だけを法定休日とし、他方を法定外休日とすることもできますし、土日の両方を法定休日とすることもできるということです。

そして、この法定休日や法定外休日に労働者を労働させることを「休日労働」といいます。

そのうち、法定休日における休日労働を「法定休日労働」、法定外休日における休日労働を「法定外休日労働」と区別して呼ぶ場合もあります。

休日労働に対する規制

使用者は、原則として、労働者に休日労働をさせることはできません。

特に、法定休日に休日労働をさせる場合には、労働基準法所定の要件を満たす三六協定を締結し、労働基準監督署に提出しておく必要があります。

他方、法定外休日労働の場合にはそのような規制はありませんが、法定外休日労働が時間外労働に当たる場合には、時間外労働に関する三六協定を提出しておかなければなりません。

仮に三六協定があったとしても、労働者を休日に労働させた場合には賃金を支払う必要があります。

休日の労働は所定賃金でカバーされていませんので、法定休日であるか法定外休日であるかにかかわらず、その休日における労働に対しては、少なくとも、その休日1日分の基礎となる賃金相当額の支払いは必要となります。

加えて、法定休日に労働させた場合には、使用者は労働者に対し、休日労働に対する割増賃金(休日手当)を支払わなければなりません。

その割増率は、算定の基礎となる賃金の1.35倍以上です(労働基準法37条1項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

これに対し、法定外休日に労働させた場合には、休日割増賃金の支払いは必要ではなく、その休日1日分の基礎となる賃金相当額の賃金を支払えば足ります。

もっとも、法定外休日が、時間外労働に当たる場合(例えば、法定外休日に8時間を超える労働をさせた場合やその週においてすでに40時間を超える労働をさせた場合)には、通常の労働日と同様、時間外労働に対する割増賃金(残業代)も発生します。

時間外労働の割増率は基礎賃金の1.25倍以上です(なお、大企業については、月60時間を超える残業に対しては基礎賃金の1.5倍以上の残業代を支払わなければならない場合があります。)。

休日の振替

労働者が所定休日に出勤した場合に、その所定休日の代わりに、別の日が休日として付与されることがあります。

いわゆる「休日の振替」です。

この休日の振替は、労働基準法に規定がありません。

もっとも、実務上、休日の振替は許容されると解されています。

休日の振替には、事前に所定休日は別の日を休日とすることを指定した上で、所定休日を労働日にするという「事前振替」と、労働者が所定休日に出勤した後に休日を付与するという「事後振替」があります。

事前振替によって与えられる新たな休日のことを「振替休日」といい、事後振替によって与えられる新たな休日のことを「代休」といいます。

事前振替の場合にはあらかじめ所定休日と労働日を入れ替えているため、出勤した休日は通常労働日として扱われ、その日がもともと法定休日であったとしても、休日労働に対する割増賃金は発生しないことになります。

これに対して、事後振替の場合には、事後的に休日を付与するものにすぎないので、出勤した所定休日はあくまで所定休日であり、それがもともと法定休日であったならば、休日労働に対する割増賃金が発生します。

休日の振替の適法性

実際上、頻繁に行われている休日の振替ですが、実は、休日の振替については、労働基準法その他労働関連の法律で明確な定めはありません。

実際的な運用にすぎないということです。

そこで、この休日の振替が労働基準法等に違反するものではないのかということが問題となります。

この点については、いつの日を休日とするか、つまり、使用者にはあらかじめ休日を特定しておく義務があるのかという問題とも関連してきます。

あらかじめ休日は特定されていなければならないと考えるのであれば、その特定された休日を別の日に振り替えてしまうことは使用者の義務に違反することになるので、休日振替は許されないということになるでしょう。

もっとも、労働基準法では休日を付与することは必要とされているものの、その休日を特定することまでは求められていないことから、使用者に休日特定義務は課されていないとするのが一般的な解釈です。

そして、使用者に休日特定義務が課されていないことから、休日の振替も労働基準法等には違反しないものと解するのが一般的です。

事前の振替

あらかじめ所定休日と異なる日を休日に指定した上で、所定休日を労働日に振り替えることを「事前の振替」といいます。

そして、この新たに所定休日とされた日を「振替休日」と呼んでいます。

前記のとおり、休日の振替自体は労働基準法に違反するものではありません。

しかし、労働契約において決められている所定休日を変更するものであることに変わりはありません。

したがって、事前の振替をするためには、労働者の個別の同意がある場合か、そうでなければ、就業規則または労働協約等において、休日振替の必要性がある場合に休日の事前振替ができる旨の規定があり、それに基づいて休日の事前振替が行われることが必要となります。

上記の要件を満たした上で休日の事前振替がなされた場合には、労働契約において指定されていた所定休日が労働日となり、事前に休日として指定されていた別の労働日が所定休日となります。

したがって、労働契約において所定休日とされていた日に出勤したとしても、休日労働をしたことにはならず、仮にその日が法定休日であったとしても、休日労働に対する割増賃金は発生しないことになります。

事前の振替の要件

休日の事前振替をすること自体は、労働基準法に違反するものではないと考えられています。

しかし、もちろん、何らの制限もなく事前振替ができるわけではありません。

労働契約上の根拠があること

労働者と使用者との間の労働契約においては、いつが所定休日とされるのかが特定されているはずです。

例えば、毎週土日は所定休日とするというように特定されているということです。

そうすると、休日を事前振替するということは、あらかじめ労働契約で特定されている所定休日を変更するということですから、使用者側の一方的判断だけで事前振替をすることはできません。

したがって、休日の事前振替をするためには、労働契約上の根拠が必要となります。

具体的にいえば、就業規則又は労働協約において、休日振替の必要性がある場合には休日の事前振替ができる旨の規定が定められているか、または、労使間で休日の事前振替をする旨の個別合意があり、それらに基づいて休日の事前振替をする場合でなければ、休日の事前振替はできないということです。

事前の振替であること

休日の事前振替の場合には、所定休日が労働日に変更されるので、出勤した「休日であった日」について休日労働に対する割増賃金(休日手当)は発生しないことになります。

それにもかかわらず、いったん休日労働して休日割増賃金が発生した後に、さかのぼってその休日労働をした日を休日ではないことにできてしまうとすると、労働者の権利を害することになります。

そのため、休日の事前振替の場合には、文字どおり、振替休日の日を休日出勤する前にあらかじめ指定しておく必要があるのです。

なお、就業規則等で休日の事前振替を定めていた場合であっても、振替の必要性がなければ振替はできず、また、事前振替の方法や手続を定めておく必要があると解されています。

労働基準法上の休日の原則に反しないこと

休日の事前振替自体は労働基準法に違反しないとはいっても、だからといって、労働基準法上の休日に関する原則に反してよいわけではありません。

したがって、休日の事前振替の結果、週休制の原則(1週間に1回以上の休日を付与しなければならないとする原則。変形週休制の場合には、4週間に4回以上。)に違反することになった場合には、労働基準法違反となります。

事前の振替の効果

休日の事前振替が要件を満たしている場合、所定休日が労働日に変更され、代わりに所定休日と異なる労働日が所定休日に変更されることになります。

そのため、当初の所定休日が法定休日であったとしても、事前振替によってすでに休日ではなくなっている以上、その日の労働は休日労働ではないということになり、したがって、休日労働に対する割増賃金も発生しないことになります。

つまり、通常の所定労働日に出勤したのと同じ扱いになるわけです。

もっとも、その振り替えられた日の労働が時間外労働に当たる場合や、深夜労働に当たる場合には、もちろん時間外労働に対する割増賃金(残業代)または深夜労働に対する割増賃金(深夜手当)は発生します。

事後の振替

労働者が所定休日に出勤した後に、別の日を所定休日として付与することを「事後の振替」といいます。

そして、この新たに付与された休日のことを「代休(代休日)」と呼んでいます。

事後の振替は、事前振替と異なり、労働契約上の根拠をもって所定休日を変更したわけではありません。

単に、新たに所定休日を与えたというにすぎません。

したがって、出勤した所定休日が法定休日であれば、その日の労働は休日労働であり、休日労働に対する割増賃金は当然に発生します。

ただし、後に代休が付与されることによって、その代休日の通常賃金分は消滅することになります。

事後の振替の要件

休日の事後振替をすること自体は、労働基準法に違反するものではないと考えられています。

もっとも、労働者を休日出勤させたからといって、必ずしも代休を付与しなければならないと定められているわけでもありません。

したがって、代休を付与するかしないか、代休を付与するとしてどのような条件で代休を付与するのか等については、労働者と使用者との間の労働契約の内容によるということになるでしょう。

事後の振替の効果

休日の事前の振替の場合、所定休日が労働日に変更されることになりますから、当初の所定休日に出勤したとしても、それはもはや休日労働には当たらないということになります。

これに対して、休日の事後の振替には、所定休日を労働日に変更するというような効果はありません。

あくまで、代休日を付与するというだけの意味しか持っていません。

したがって、所定休日への出勤はそのまま休日出勤であり、その所定休日が法定休日であれば、その日の分の賃金(所定賃金相当額)と休日労働に対する割増賃金(休日手当)が発生することになります。

また、出勤した所定休日が法定外休日であった場合は、その日の分の賃金(所定賃金相当額)が発生し、時間外労働に当たる場合には時間外労働に対する割増賃金(残業代)が発生します。

ただし、事後の振替によって、本来出勤しなければならないはずであった労働日が代休日になるため、その代休日の分の所定賃金は控除されることになります。

なお、いずれの場合でも、深夜労働に当たる場合には、もちろん深夜労働に対する割増賃金(深夜手当)は発生します。

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事業場外みなし労働時間制とは何か

残業代など割増賃金の計算の基礎となる労働時間は、実労働時間で算定されます。

要するに、実際に労働をした時間を労働時間として取り扱うということです。

もっとも、労働基準法は、一定の場合に、労働者が何時間働いたのかにかかわらず、あらかじめ定められている労働時間働いたものとみなすという制度を設けています。

この制度のことを「みなし労働時間制」といいます。

このみなし労働時間制には、事業場外みなし労働時間制と裁量労働みなし労働時間制(裁量労働制)という2つの種類があります。

営業マンや記者など、基本的に事業場から外に行って仕事をするというタイプの職種があります。

この場合、事業場外にいるわけですから、労働時間を把握するのが使用者にとっても難しくなります。

そこで、 労働者が事業場外で勤務しているという場合、一定の要件を満たしたときは、実労働時間による労働時間の算定として、所定労働時間数で労働したものとみなすことができるというみなし労働時間制度が用意されています。

それが「事業場外みなし労働時間制」です(労働基準法38条の2)。

すなわち、事業場外みなし労働時間制とは、事業場外みなし労働時間制とは.労働者が労働時間の全部または一部について事業場外での業務に従事した場合に、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなすという制度です。

事業場外みなし労働時間制の要件

労働者が事業場外で勤務する場合など労働時間が把握しがたい場合には、使用者・会社において、事業場外みなし労働時間制を採用している場合があります。

もっとも、このみなし労働時間制は、労働者の実労働時間にかかわらず労働時間を所定労働時間数にみなしてしまうというもので、濫用されてしまうと、労働者に大きな不利益を与える恐れがあります。

そのため、事業場外みなし労働時間制が有効となるためには、以下の要件を満たしていなければならないとされています。

事業場外労働

事業場外みなし労働時間制が有効となるためには、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合」でなければなりません。

事業場外とは、使用者による場所的拘束から離れて、具体的な指揮・命令・監督の及ばない場所のことをいいます。

単に通常業務を行う場所ではないというだけでなく、使用者による具体的な指揮や命令が及ばない場所でなければ、事業場外とはいえません。

また、事業場外労働は、労働時間の全部である必要はありません。

労働時間の一部だけ事業場外であるという場合でも、事業場外労働に該当します。

ただし、労働時間の一部だけ事業場外労働であるという場合には、その一部についてのみ事業場外みなし労働時間が適用されることになります。

労働時間を算定し難いとき

事業場外みなし労働時間制が有効となるためには、事業場外労働であるというだけでは足りず、その事業場外労働について「労働時間を算定し難いとき」でなければなりません。

つまり、事業場外労働であったとしても、使用者がその労働者の実労働時間を管理・把握できるのであれば、事業場外みなし労働時間制の適用は認められないということです。

この「労働時間を算定し難いとき」とは、「就労実態等の具体的事情をふまえ、社会通念に従い、客観的にみて労働時間を把握することが困難であり、使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価される場合」であると解されます(阪急トラベルサポート事件第一次訴訟第一審判決)。

労働時間を算定し難いときであるかどうかの具体的な判断基準・要素としては、以下の要素が挙げられます。

  • 使用者による事前の具体的指示があったかどうか
  • 労働者による事前の業務予定報告などがあったかどうか
  • 事業場外労働における責任者・時間管理者が指定されているかどうか
  • 労働者による事後の業務内容報告などがあったかどうか
  • 始業・終業時刻が指定されていたかどうか
  • 事業場外労働の前後に出社しているかどうか
  • 携帯電話などによって業務指示または業務報告がされていたかどうか
  • 事業場外労働について労働者に裁量があったかどうか

現在では、携帯電話や電子メールなど、国内・国外を問わずリアルタイムで連絡をとる手段がいくつもあります。

そのため、事業場外労働であっても、労働時間を把握することは非常に容易になっています。

そのため、「労働時間を算定し難いとき」と認められる場合は、極めて特殊な状況で労働している場合など、非常に限定された場合に限られるでしょう。

事業場外みなし労働時間制の効果

事業場外みなし労働時間制が適用されると、労働者の実際の労働時間にかかわらず、その労働時間は所定労働時間として扱われることになります。

たとえば、1日の所定労働時間が8時間とされていた場合、たとえば、ある日の労働者の労働時間が実際は10時間であったとしても、その日の労働時間は8時間として扱われるということです。

他方、たとえば、ある日の実際の労働時間が1時間であったとしても、その日の労働時間は8時間として扱われることになります。

労働時間を所定労働時間と「みなす」というのは、反証をしても覆すことができないということです。

つまり、ある日は1日10時間働いたということを証明しても、その日の労働時間を10時間にしてもらうことはできないことになります。

あくまで、所定労働時間働いたものとして扱われるのです。

通常必要となる時間が所定労働時間を超える場合

前記のとおり、事業場外みなし労働時間制が適用されると、実際に何時間働いたとしても、その労働時間は所定労働時間としてみなされることになります。

もっとも、「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」には、所定労働時間ではなく、その業務を遂行するために通常必要となる労働時間がみなし労働時間となります(労働基準法38条の2第1項ただし書き)。

たとえば、ある事業場外業務を遂行するためには、通常10時間必要だったとします。

この場合、所定労働時間が8時間であったとしても、事業場外みなし労働時間制によるみなし労働時間は10時間となるということです。

この通常必要時間は、個々の業務内容によって異なってきますが、できる限り、実際の実労働時間に近づくようにしなければならないと解されています。

したがって、労働者としては、事業場外労働を遂行するために必要となる労働時間が所定労働時間を超えるという場合には、その通常必要時間を主張立証していくことが必要となります。

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裁量労働みなし労働時間制とは何か

裁量労働みなし労働時間制とは、一定の業務に就いている労働者について、通常の労働時間の規律を適用せず、あらかじめ定められている労働時間数、労働したものとみなすという制度です。

つまり、裁量労働時間制とは、その労働者が、現実に何時間労務を提供したかは考慮しないという制度です。

極端にいえば、1日10時間働こうと、逆に、1日1分しか働かなかったとしても、一定時間労働したものとみなすという制度なのです。

裁量労働みなし労働時間制の種類

この裁量労働みなし労働時間制(裁量労働制)には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」という2つの種類があります。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものについて、その労働者の労働時間を、あらかじめ労使協定によって定められた労働時間であるとみなすという制度です。

専門的な業務については、使用者において労働時間を設定・管理することが容易ではありません。

そのため、一定の専門業務を行う労働者については、みなし労働時間制とすることが認められているのです。

もっとも、専門職であれば、どのような職種でも裁量労働制とすることができるというわけではなく、専門業務型裁量労働制の対象となる業務がどのような業務なのかは、厚生労働省令によって定められています。

  1. 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務
  3. 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  6. 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
  7. 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
  8. 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務について、その業務を行う労働者の労働時間を、あらかじめ定められた労働時間であるとみなすという制度です。

これは、企画、立案、調査、分析を行う事務系労働者について、みなし労働時間制を認めるという裁量労働制です。

もっとも、専門業務型の場合と同様、企画等の業務であれば、どのような労働者に対しても、裁量労働制とすることができるわけではありません。

企業の中枢部門における企画業務で、しかも、自ら業務遂行手段や時間配分を裁量で決定することができ、使用者からの具体的な指示や命令を受けないで業務ができるという労働者でなければ、対象にならないとされています。

裁量労働みなし労働時間制の効果

前記のとおり、裁量労働みなし労働時間制(裁量労働制)が適用されている場合、その対象となる労働者については、実労働時間にかかわらず、あらかじめ定められた労働時間数労働したものとしてみなされることになります。

専門業務型裁量労働制の場合であれば、あらかじめ労使協定によって定められた労働時間数に、企画業務型裁量労働制の場合であれば、労使委員会の決議によって定められた労働時間数に、それぞれみなされるということです。

例えば、労使協定等によってあらかじめ定められている労働時間が8時間であれば、たとえ実労働時間が10時間であっても、その労働者の労働した時間は8時間であったとみなされることになります。

この「みなす」というのは、「推定する」場合と異なります。

推定であれば反証があれば覆すことができますが、「みなす」場合には反証があっても覆すことができません。

つまり、実際の実労働時間は10時間であるということを証明したとしても、みなし労働時間が8時間であれば、労働時間数は8時間であったものとして扱われるということです。

なお、裁量労働制であるからといって、時間外労働・深夜労働・休日労働に対する割増賃金を支払わなくてもよくなるわけではありません。

例えば、労使協定等によって定められたみなし労働時間が1日10時間であるというのであれば、法定労働時間8時間を超える部分=2時間分は時間外労働になりますので、その2時間分の残業代は支払われなければなりません。

この場合、使用者側から、その対象労働者は実際には8時間未満しか働いていないといっても、みなし労働時間制ですので、10時間労働したものとみなされますので、やはり2時間残業したことになり、残業代を支払わなければなりません。

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割増賃金はどのようにして計算するのか

労働

労働基準法上、使用者は、労働者を時間外労働(法外残業)させた場合、深夜労働させた場合、法定休日労働させた場合には、基礎賃金を一定の割増率で割り増した「割増賃金」を支払わなければならないとされています。

この割増賃金には、時間外労働に対する割増賃金(いわゆる残業代)、深夜労働に対する割増賃金(深夜手当)、休日労働に対する割増賃金(休日手当)があります。

これらの割増賃金を計算は、法令によって定められています。

割増賃金の計算の手順を以下のとおりです。

所定賃金の確認

残業代等の割増賃金を計算するに当たっては、計算の基礎となる賃金(基礎賃金)を算出しておく必要がありますが、この基礎賃金を算出するためには、まずそもそもの所定賃金の金額を確認する必要があります。

所定賃金とは、労働契約や就業規則などで定められている賃金のことをいいます。

通常は、単に給与や給料、あるいは基本給と呼ばれるものです。

また、会社によっては、役職手当や通勤手当などの各種手当が定められている場合があり、これらの手当も、労働契約や就業規則などで支給基準が明確に定められている場合には賃金として扱われるため、所定賃金に含まれるといえます。

基礎賃金の確認

残業代は、一定の賃金を基礎として算定することになります。

この残業代計算の基礎となる賃金のことを「基礎賃金」といいます。

この基礎賃金は所定賃金をもとにして算定していきますが、基礎賃金は、所定賃金から一定の除外賃金と呼ばれるものを差し引いて算定されるものであるため、所定賃金とは必ずしも一致するとは限りません。

したがって、割増賃金計算の基礎賃金は、所定賃金から除外賃金を差し引いて算定するということになります。

除外賃金となる各種の手当には以下のものがあります。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

もっとも、上記の手当が支払われていた場合であっても、実際にこれらの手当を除外するにあたっては、単に名称によるものでなく、その実質によって取り扱うべきものとされています。

所定労働時間の確認

割増賃金を計算するためには、この基礎賃金の1時間当たりの金額を算出する必要があります。

この1時間当たりの基礎賃金を算出する前提として、所定労働時間を確認しておく必要があります。

所定労働時間とは、就業規則や労働契約などであらかじめ定められている労働時間のことをいいます。

残業代等の割増賃金を計算する場合には、まずこの所定労働時間を算出して、1時間当たりの基礎賃金を計算しなければなりません。

月給制の場合

月給制の場合、就業規則等で毎月の所定労働時間数が具体的に定められているのであればそれに従うことになりますが、そのような具体的な定めがなされていない場合もあります。

その場合、残業代計算の基礎とする所定労働時間は、1年間の所定労働日数を12で割って月ごとの平均所定労働日数を算出し、その上で、その月間平均所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けて、月間の合計の所定労働時間数を算定していきます。

まず、年間の所定労働日数は、就業規則等で定められていればその日数となります。

定められていない場合には、1年の日数365日(閏年は366日)から所定休日を差し引いて計算することになります。

そして、上記で算出された1年間の所定労働日数を12で割り、1か月ごとの平均所定労働に数を算定します。

この1か月ごとの平均所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けて1か月の所定労働時間を算出します。

日給制の場合

日給制の場合、残業代計算の基礎とする所定労働時間は、1日の所定労働時間を基準とすることになります。

例えば、所定労働時間が1日8時間なのであれば、1日8時間を基礎として残業代を計算することになります。

もっとも、日給制の場合には日によって労働時間が異なるということもあり得ます。

このように、1日ごとの所定労働時間数が就業規則等によって定められていればそれに従います。

定められていない場合には、1週間の所定労働時間を基準とすることになります。

つまり、1週間分の所定労働時間の合計数を7で割って、1日の平均所定労働時間を算出します。

1時間当たりの基礎賃金の算出

残業代等の割増賃金の計算の基礎賃金は、1時間当たりで算定する必要があります。

そこで、1時間当たりの基礎賃金額を算出する必要があります。

月給制の場合

月給制の場合であれば、月給に基づく基礎賃金を1か月当たりの平均所定労働時間で割って1時間当たりの基礎賃金を算出することになります。

日給制の場合

日給制の場合であれば、日給に基づく基礎賃金を1日の所定労働時間または1日の平均所定労働時間で割って1時間当たりの基礎賃金を算出することになります。

実労働時間の確認

残業代・深夜手当・休日手当は、実際に時間外労働をした時間、深夜労働をした時間、休日労働をした時間に応じて支払われることになります。

そこで、これらの時間外労働・深夜労働・休日労働をした実労働時間を算出する必要があります。

この実労働時間はタイムカードなどによって算定しておく必要があります。

また、労働時間数を算出する場合には1分単位で算出することになります。

割増賃金の算出

1時間当たりの基礎賃金に実際の時間外労働時間・深夜労働時間・休日労働時間を掛けます。

そして、その算出した金額に、各割増賃金の割増率を掛けます。

残業代の割増率は1.25倍(ただし、一定の大企業については、1月60時間を超える時間外労働の60時間を超える部分の残業代の割増率は1.5倍となります。)、深夜手当の割増率は1.25倍、休日手当の割増率は1.35倍です。

【 1時間当たり基礎賃金 × 時間外労働時間数 ×1.25 = 残業代の金額 】

【 1時間当たり基礎賃金 × 深夜労働時間数 ×1.25 = 深夜手当の金額 】

【 1時間当たり基礎賃金 × 休日労働時間数 × 1.35 = 休日手当の金額 】

1時間未満の時間については分単位の基礎賃金を算定する必要があります。

この場合には、1時間当たりの基礎賃金を60で割り、この1分当たりの基礎賃金に実際の時間外労働時間を掛け、各割増賃金の割増率を掛けることになります。

なお、就業規則や労働契約などで残業代の割増率を1.25倍以上、深夜手当の割増率を1.25倍以上、休日手当の割増率を1.25倍以上とすることは当然可能です。

そのような定めがある場合は、その割増率で計算することになります。

他方、就業規則などで残業代の割増率を1.25倍未満、深夜手当の割増率を1.25倍未満、休日手当の割増率を1.35倍未満とした場合は労働基準法に違反することとなり、そのような規定は無効となります。

したがって、そのような場合には労働基準法で定める割増率で計算することになります。

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時間外労働に対する割増賃金(いわゆる残業代)とは

割増賃金

労働基準法は、労働者の労働時間を、1日に8時間以内、1週間に40時間以内と定めています。

これを法定労働時間と呼んでいます。

そして、この法定労働時間を超える労働のことを時間外労働と呼んでいます。

この時間外労働に対しては、所定賃金を一定割合で乗じた金銭を支払わなければならないとされています。

この時間外労働に対して支払われる割増賃金が一般的にいう残業代です。

時間外労働に対しては、一定のプレミアムを付した賃金を支払わなければならないとすることによって、時間外労働を抑制して、労働者が長時間労働を強いられるのを防止しようとしているのです。

法定外残業と法内残業

もっとも、残業代・残業手当と言っても、実は、割増賃金となる残業代と割増賃金とはならない残業代とがあります。

割増賃金が支払われる残業が「法定外残業」と呼ばれ、割増賃金ではなく通常の賃金が支払われる残業は「法内残業」と呼ばれています。

法定外残業とは、前記の労働基準法所定の労働時間、すなわち、1日8時間を超えまたは1週40時間を超える残業のことをいいます。

この法定外残業に対しては、所定賃金の1.25倍の割増賃金が支払われます。

なお、一定の大企業については、特則として、1カ月における法定外残業が60時間を超える場合には、その60時間を超える法定外残業については割増率を1.5倍とするという規定があります。

他方、法内残業とは、労働基準法所定の労働時間は超えていないけれども、労働契約や就業規則などで定められた労働時間は超えているという場合の残業のことをいいます。

法内残業に対しては通常の賃金が支払われることになります。

なお、使用者が、法定労働時間に満たない労働時間を超える場合であっても割増賃金を支払う旨を定めたり、時間外労働に対する割増賃金(残業代)の割増率を1.25倍を超える割増率にすることは、当然問題ありません。

逆に、法定労働時間を超える労働時間を所定労働時間として設定し、それを超える場合でなければ残業代を支払わないとか、残業代の割増率を1.25倍未満とすることは、労働基準法に違反するのでできません。

仮にそのような定めをしたとしても、無効となります。

残業代・残業手当と休日出勤

残業代・残業手当と言うと、通常の勤務日に残業した場合に支払われるものだと思われている方もいるかもしれません。

しかし、法律上の考え方でいくと、残業代・残業手当というものは、必ずしも勤務日の残業だけに支払われるものではありません。

労働基準法では、使用者は労働者に対して週に最低1回以上の休日を与えなければならないとしています。

この労働基準法によって必ず与えられなければならない週1回以上の休日のことを「法定休日」と呼びます。

法定休日に労働した場合、前記の割増率1.25倍の時間外労働よりも高い割合である1.35倍の割増賃金が支払われます。

労働基準法上、休日手当という場合は、この法定休日に対する割増賃金のことを指します。

もっとも、大半の企業等では、この法定休日以外に週にもう1日ほど休日が定められていると思います。

この法定休日ではないが、労働契約や就業規則等で与えられている所定の休日のことを「法定外休日」といいます。

法定外休日に対しては、法定休日に対する1.35倍の割増賃金は適用されません。

法定外休日は、通常の時間外労働として扱われます。

つまり、その法定外休日の労働が、1週に40時間を超えている場合にだけ1.25倍の割増賃金が支払われ、40時間を超えていない場合には、通常の賃金が支払われることになります。

そういう意味では、法定外休日における労働についても、残業代・残業手当の一種といえるでしょう。

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深夜労働に対する割増賃金とは

割増賃金

労働基準法は、労働時間を1日8時間または1週40時間と定め、加えて週1回又は4週に4回以上の法定休日を与えなければならないことを最低限の基準としていますが、それ以外にも、午後10時以降午前5時までの深夜時間帯での労働(深夜労働)を制限しています。

現代では深夜営業をしているという事業も少なくありません。

しかし、やはり人間的な健全な生活というものの基本は、日中に活動し、夜は眠るという当たり前のサイクルを守っていくということでしょう。

つまり、深夜に労働し、日中に睡眠をとるというのは、生活のリズムは乱れていると考えられ、その結果、体調を崩しやすくなることから、深夜労働は、原則としてはやはり通常勤務とは異なる待遇が必要となってきます。

そこで、労働基準法は、午後10時から翌午前5時までの労働のことを、通常の労働とは異なる「深夜労働」として扱い、通常労働とは異なる規定を設けているのです。

具体的にいえば、この深夜労働に対しては、基礎となる賃金を一定割合で乗じた金銭=割増賃金を支払わなければならないとされています。

これが、法律上の深夜割増賃金ということになります。

一般的には「深夜手当」などと呼ばれることがあります。

この深夜労働に対する割増賃金(深夜手当)の割増率は、労働基準法上、基礎賃金の1.25倍以上とされています(労働基準法37条4項)。

もちろん、上記の労働基準法所定の深夜手当以外に、使用者が就業規則などで法律の割増賃金とは違う割増手当を定めることも可能です。

ただし、労働基準法所定の割増率1.25倍を下回ることは許されません。

法定時間外に深夜労働をした場合

例えば、所定労働時間が午前9時から午後6時まで(休憩1時間・実働8時間)であるという場合に、午前9時から翌日の午前1時まで労働したとすると、午後6時以降の労働は法定時間外労働ということになりますが、さらに、そのうちの午後10時以降は深夜労働にも当たるということになります。

これらの場合に、割増賃金をどのように考えるかということが問題となってくるということですが、結論からいえば、単純に割増率をたしていくということになります。

つまり、時間外に深夜労働をした場合には、時間外労働の割増率(1.25倍)と深夜労働の割増率(1.25倍)をたして、基礎賃金の1.5倍の割増賃金を支払わなければならないということになります(労働基準法施行規則20条1項)。

上記の例で言うと、午後6時から午後10時までは基礎賃金の1.25倍で済みますが、午後10時から午前1時までについては基礎賃金の1.5倍の割増賃金を支払う必要があるということです。

なお、一定の大企業については、月に60時間を超える時間外労働の場合、その60時間を超える残業に対しては基礎賃金の1.5倍以上の残業代を支払う必要がありますが、この場合には、深夜労働をすると、基礎賃金の1.75倍(月60時間超残業代1.5倍と深夜手当1.25倍の合算)の割増賃金を支払わなければならないということになります。

法定休日に深夜労働をした場合

例えば、法定休日に出勤し、その法定休日に午後10時から翌午前5時までの間の深夜労働をしたという場合、休日労働であると同時に、深夜労働も行っているということになります。

これらの場合も、やはり、単純に割増率を足していくということになります。

つまり、法定休日に深夜労働をした場合には、休日労働の割増率(1.35倍)と深夜労働の割増率(1.25倍)を足して、基礎賃金の1.6倍の割増賃金を支払わなければならないということになります(労働基準法施行規則20条2項)。

上記の例で言うと、午後10時から午前5時までの間の労働については、基礎賃金の1.6倍以上の割増賃金を支払わなければならないということになります。

なお、労働基準法41条2号の管理監督者については、残業代や休日手当を支払う必要がないとされていますが、深夜手当については支払う必要があると解されています。

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休日労働に対する割増賃金とは

割増賃金

労働基準法35条は、労働者の心身の健康を考慮して、労働時間を1日8時間、1週40時間と定めていますが、さらに、週に1日以上又は4週間に4日以上の休日を与えなければならないと定めています。

この労働基準法上週1回以上または4週間に4回以上付与されなければならない休日のことを「法定休日」といいます。

そして、この法定休日の労働のことを「休日労働」といいます。

法定休日労働に対しては、基礎賃金を一定割合で乗じた金銭=割増賃金を支払わなければならないとされています。

この割増賃金のことを「休日手当」といいます。

法定休日における労働の場合

前記のとおり、労働基準法においては、週1日又は4週に4日以上の休日を与えなければいけないとされています。

この、最低限付与しなければならない週に1日または4週に4日以上の休日のことを法定休日といいます。

多くの会社などでは、これに従って、週1日(例えば日曜日)の休日を法定休日としていると思います。

この法定休日における労働(休日労働)に対しては、基礎賃金の「1.35倍」以上の割増賃金(いわゆる休日手当)を支払わなければならないとされています(労働基準法37条1項、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

法定外休日における労働の場合

労働基準法上の休日とは、前記の法定休日のことを指しますが、実際には休日という場合、2種類の休日があります。

それは、「法定外休日」と呼ばれる休日です。

労働基準法は、週1日または4週間に4日以上の法定休日を与えなければならないとしていますが、これは最低基準にすぎません。

使用者が労働者に対して法定休日以外にも休日を与えることは当然許されます。

この法定休日のほかに付与される休日のことを、法定外休日といいます。

この法定外休日と法定休日とでは、それぞれこれらの休日に労働をした場合に支払われる賃金が異なってきます。

法定外休日における休日割増賃金の支払い

具体的にどういう違いがあるのかというと、休日労働に対する割増賃金が支払われるのかどうかという違いです。

法定休日以外にも、たいていの会社では就業規則などで週2回以上、例えば土日祝日を休日としているかと思います。

日曜日を法定休日とすれば、それ以外の土曜日や祝日などの休日は法定外休日ということになります(なお、すべてを法定休日にすることも可能です。)。

労働基準法では、法定休日の労働のことを休日労働と呼び、これに対しては、前記のとおり割増賃金(1.35倍以上)を支払わなければならないとしていますが、法定外休日に対してはそのような定めはありません。

つまり、法定外休日の労働に対しては、原則として、所定賃金が支払われるにすぎないのが原則であるということになります。

ただし、就業規則等で、法定外休日にも休日労働相当の割増賃金を支払うという規程をすることは、当然に許されます。

その場合には、その規定に従って、割増賃金が支払われることになります。

法定外休日における時間外割増賃金の支払い

とはいえ、法定外休日であっても、時間外労働の規律は及びます。

したがって、法定外休日における労働が、1日8時間・週40時間以内という労働時間の制限を超える労働である場合には、時間外労働の割増賃金(1.25倍以上)の支払いが必要となります。

例えば、月曜日から金曜日までの5日間が所定労働日で、土曜日が法定外休日、日曜日が法定休日であるという場合に、ある週、月曜日から金曜日までですでに35時間労働した上、土曜日にも出勤して7時間働いたとします。

土曜日は法定休日ではないので休日労働とはならず、1.35倍の割増賃金は支払われません。

しかし、月曜日から土曜日までの総労働時間は42時間です。

つまり、土曜日の労働時間7時間のうちの2時間の労働は、時間外労働となります。

したがって、土曜日の労働時間のうちの5時間については所定賃金が支払われ、土曜日の労働時間のうちの週40時間を超える2時間については、時間外労働として1.25倍の割増賃金が支払われることになるのです。

ちなみに、一定の大企業については、月の労働時間が60時間を超える場合には、その60時間を超える部分については、基礎賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払わなければならないとされていますので、場合によっては、法定休日労働よりも法定外休日労働の方が、支払うべき賃金額が大きくなるということはあり得るでしょう。

なお、上記のとおり、法定外休日労働のうちで時間外労働に当たらない部分であっても、割増はされないにしろ、通常の所定賃金に相当する金額は支払われなければなりません。

休日振替した場合の休日割増賃金

休日の振替

休日の振替には、休日出勤する前にあらかじめ所定休日ではない日を振替休日に指定しておくという事前の振替と、休日出勤した後に所定休日ではない日を代休として付与するという事後の振替があります。

これら休日振替がなされている場合には、休日出勤をしたとはいえ、代わりの休日は付与されています。

そこで、その場合にも割増賃金等が発生するのかが問題となります。

出勤日が法定休日であった場合

前記のとおり、出勤日が法定休日であった場合には、休日労働に対する割増賃金+1日分の基礎賃金相当額の賃金(基礎賃金の1.35倍)が支払われるのが原則です。

事前の振替がされている場合

休日の事前の振替が適法に行われると、出勤すべき法定休日は労働日に変更され、それに代わって、あらかじめ指定された振替休日が法定休日ということになります。

したがって、出勤した日(当初の法定休日)は通常の労働日ということになりますので、そこでの労働は休日労働ではないということになり、休日手当も発生しないことになります。

また、事前の振替によって労働日と休日が入れ替わっているので、 出勤した日(当初の法定休日)の労働も所定賃金の範囲内となり、1日分の基礎賃金相当額の賃金も別途発生することはないということになります。

したがって、事前の振替がなされた場合の割増賃金等の支払いはなくなるということになります。

ただし、法定休日が別日に振り替えられる結果、週40時間以内という労働時間制限を超える時間数も多くなり、時間外労働が増加することはあり得るでしょう。

また、事前の振替をしたからといって週休制の原則を変えることはできません。

したがって、振替の結果、1週1回(または4週4回)の法定休日がなくなってしまう場合には、それではどの日を法定休日として特定すべきかという別の問題も生じてくる可能性があります。

事後の振替がされている場合

休日の事後の振替は、事前の振替と異なり、所定休日を労働日に変更するという効果はありません。

単に、代休を付与するにすぎません。

したがって、事後の振替がされたとしても、法定休日に出勤した場合には、その労働は休日労働であり、休日割増賃金(基礎賃金の1.35倍)+1日分の賃金が発生することになります。

ただし、休日出勤後の代休は労働をしないわけですから、その日の分の賃金は控除されます。

実務上は、いったん1.35倍の賃金を発生させ、その後1日分の賃金を控除するという経理処理を省略するために、事後の振替の場合には、休日出勤日に135-100=35%分だけ支給するという精算的な経理処理が行われることが少なくありません。

ただし、いったんは発生している1.35倍の賃金を控除するのですから、賃金全額払いの原則に反するおそれもあります。

そこで、上記のような精算的経理処理をするためには、就業規則等にその旨が定められていることが必要です。

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